バーチャルオフィスで公認会計士と税理士は開業できる? 条件の違いについて

近年、初期費用やランニングコストを抑えるために、バーチャルオフィスを利用する士業が増えています。しかし、公認会計士と税理士は、税理士法や公認会計士法によって、事務所の設置義務が定められています。そのため、バーチャルオフィスのみで事務所を設置することは、一見すると難しいように思われます。

そこで、本記事では、公認会計士と税理士がバーチャルオフィスで開業できるかどうかについて、詳しく解説します。

目次

バーチャルオフィスとは

バーチャルオフィスとは、住所や電話番号のみを借りられるオフィスのことをいいます。実際にオフィスとして利用するスペースはなく、自宅やカフェなど、自ら選択した場所で仕事をすることができます。

レンタルオフィスとの違い

バーチャルオフィスとレンタルオフィスの最大の違いは、オフィス設備・個室の有無です。

レンタルオフィスは、実際にオフィスとして利用できる個室スペースが用意されており、デスクや椅子、会議室などの設備があります。

一方、バーチャルオフィスは、住所や電話番号のみを借りることができ、会議室は基本的になく、一部のサービスではある場合があります。

バーチャルオフィスとレンタルオフィスの比較表

項目バーチャルオフィスレンタルオフィス
オフィス設備なし個室あり
住所ありあり
初期費用0円~数万円〜
月額費用数百円〜数万円〜
会議室の利用オプションであり基本利用可能
郵便物の受け取り代行あり自ら受け取り

公認会計士と税理士はバーチャルオフィスで事務所登録できるか

公認会計士の場合

公認会計士は、バーチャルオフィスを利用して事務所登録をすることができます。

公認会計士が事務所登録をするために必要な条件は、以下のとおりです。

  • 公認会計士の資格を有していること
  • 実務経験(業務補助等)の期間が2年以上あること
  • 事務所の所在地を管轄する会計士会への登録をしていること

公認会計士として開業する場合、事務所を構えたり設備を整えたりすることは必須要件ではありません。

そのため、バーチャルオフィスでも開業できます。

税理士の場合

税理士の場合、バーチャルオフィスで開業することはできません。

なぜなら、税理士事務所として営業申請する際に、事務所室内の写真(=物理的な作業スペース)が必要だからです。

令和4年度の税理士法の改正により、税理士制度に関する大きな見直しが行われましたが、バーチャルオフィスやシェアオフィスでの開業は依然として認められていません。

具体的には、税理士法おいて、

「税理士事務所は、事務所の室内及び事務所に備える書類等の保管状態が、税務に関する業務の適正かつ確実な遂行に支障がないことを明らかにするため、事務所の室内の写真及び当該写真の撮影年月日を記載した書面を添付して、税務署長の登録を受けなければならない。」

と定められています。

この規定により、税理士事務所として開業するためには、物理的な事務所を有し、その事務所内に税務に関する業務を行うためのスペースがあることが求められます。

バーチャルオフィスは、郵便物の転送や電話の転送などのサービスを提供するものの、物理的な事務所を提供するわけではありません。そのため、バーチャルオフィスのみで税理士事務所として開業することはできません。

税理士がバーチャルオフィスを利用できる条件

バーチャルオフィスの住所と合わせて自宅の一部を事務所とする場合は、税理士事務所として開業できます。

この場合、自宅の一部を事務所として使用する旨の届出が必要となります。

公開する住所としてバーチャルオフィスを使用することで、費用を抑えつつ都心の一等地の住所を利用することができます。

ただし、公開住所をバーチャルオフィスとすることで、クライアントが突然その場所を訪れる可能性があるため、注意が必要です。

士業がバーチャルオフィスを使うメリット

会計士や税理士などの士業がバーチャルオフィスを使うメリットは、主に以下の3つが挙げられます。

  • 初期費用やランニングコストを抑えることができる
  • 都心部や好立地に事務所を構えることができる
  • プライバシーを守ることができる

初期費用やランニングコストを抑えることができる

バーチャルオフィスは、物理的なオフィスを借りる必要がないため、初期費用やランニングコストを大幅に抑えることができます。一般的に、都心部で事務所を借りる場合、敷金や礼金、家賃、管理費、光熱費など、毎月数十万円の費用がかかります。一方、バーチャルオフィスは、月額数万円程度で利用できるサービスが一般的です。

都心部や好立地に事務所を構えることができる

バーチャルオフィスは、都心部や好立地に住所を用意しているサービスが多いです。そのため、自宅の住所を公開せずに、都心部や好立地に事務所を構えることができます。これは、顧客からの信頼感を高め、ビジネスの拡大につながる可能性があります。

プライバシーを守ることができる

バーチャルオフィスを利用することで、自宅の住所を公開する必要がありません。そのため、顧客や第三者からのプライバシー侵害を防ぐことができます。これは、士業にとって特に重要なメリットと言えるでしょう。

士業は、顧客の個人情報や秘密を扱うことが多いため、プライバシーの保護が重要です。バーチャルオフィスを利用することで、自宅の住所を公開せずに、安心して業務を遂行することができます。

具体的には、バーチャルオフィスの住所を事務所の住所として登録し、顧客や取引先とのやり取りをすべてバーチャルオフィス経由で行うことができます。これにより、自宅の住所を公開することなく、顧客や取引先と関係を築くことができます。

この記事を書いた人

木本旭洋のアバター 木本旭洋 株式会社イールドマーケティング代表取締役

株式会社イールドマーケティング代表。大手広告代理店でアカウントプランナー、スタートアップで広告部門のマネージャーを経験後、2022年に当社を創業。バーチャルオフィスとレンタルオフィスの利用経験者。

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