退職給付金の条件とは?種類別のもらえる条件と申請方法を解説

「退職給付金がもらえると聞いたけれど、自分は条件を満たしているのだろうか」
「そもそも退職給付金って、退職金のことなのか失業保険のことなのかがわからない」

退職を考え始めた方から、こうした相談を受けることが増えました。私は会社員(大手企業とスタートアップ)、フリーランス、経営者、採用責任者のすべてを経験し、自分自身の離職時にも、社員を送り出す側としても、退職にまつわるお金の制度に関わってきました。その中で強く感じるのは、退職給付金は「知っていて申請した人だけが受け取れる」お金だということです。

退職給付金という言葉には統一された定義がなく、解説する媒体によって指す範囲が異なります。この記事では、離職や休職をした際に収入の減少を補う目的で支給される制度の総称として整理し、それぞれの受給条件を種類別に解説します。

目次

退職給付金とは?条件を知る前に押さえたい定義

条件を確認する前に、まずは退職給付金という言葉が何を指すのかを整理しておきます。ここが曖昧なままだと、自分に関係のある制度を見落としてしまいます。

離職・休職時の収入減を補う制度の総称

退職給付金とは、離職や休職をした際に、収入の減少を補う目的で支給される制度を指します。ひとつの制度名ではなく、複数の制度をまとめて呼ぶ総称として使われている言葉です。

種類によって、支給期間、手続き方法、支給の目的、対象者がそれぞれ異なります。「退職給付金の条件」と一括りに調べても答えが出てこないのは、制度ごとに条件がまったく違うためです。

大きく分けると、退職給付金には次の2種類があります。

区分支給元代表的な制度
会社の制度における退職給付金勤務先の企業退職金、企業年金、中小企業退職金共済
公的制度における退職給付金国(健康保険・雇用保険など)傷病手当金、失業保険、再就職手当、住居確保給付金

このうち、受給条件を自分でコントロールできる余地が大きいのは公的制度のほうです。会社の退職金は就業規則で決まっているため交渉の余地がほとんどありませんが、公的な給付は申請の仕方やタイミングで受け取れる額が変わります。

会社の制度における退職給付金(退職金)

会社から支給される退職給付金は、いわゆる退職金です。法律で支給が義務づけられているものではなく、支給の有無や金額は各社の退職金規程によって決まります。

主な受給条件は次のとおりです。

  • 勤務先に退職金制度があること
  • 退職金規程で定められた勤続年数を満たしていること
  • 懲戒解雇など、支給制限に該当していないこと

勤続3年以上を最低条件としている企業が多いものの、これも会社ごとに異なります。そもそも退職金制度がない企業では、どれだけ長く勤めても支給されません。自分の会社に制度があるかどうかは、就業規則や退職金規程で確認できます。人事や総務に問い合わせれば開示してもらえるはずです。

公的制度における退職給付金(社会保険給付金)

公的制度における退職給付金は、健康保険や雇用保険から支給される給付の総称で、社会保険給付金とも呼ばれます。これまで支払ってきた社会保険料をもとに、働けない期間や求職中の生活を支えるための制度です。

代表的なものは次のとおりです。

制度窓口どんなときに受け取れるか
傷病手当金健康保険(協会けんぽ・健保組合)病気やケガで働けず休むとき
失業保険(基本手当)雇用保険(ハローワーク)働く意思と能力があり求職中のとき
再就職手当雇用保険(ハローワーク)給付日数を残して早期に再就職したとき
高年齢求職者給付金雇用保険(ハローワーク)65歳以上で離職したとき
教育訓練給付金雇用保険(ハローワーク)指定講座で学び直しをするとき
住居確保給付金自治体(自立相談支援機関)離職などで家賃の支払いが困難なとき

これらに共通するのは、申請しなければ1円も支給されないという点です。会社が自動的に手続きしてくれるものではなく、原則として自分で申請します。「知らなかった」で受け取り損ねる人がもっとも多いのが、この公的制度における退職給付金です。

退職金・失業保険との違いを一覧で確認

退職給付金、退職金、失業保険の関係を整理すると、次のようになります。

用語位置づけ
退職給付金離職・休職時の収入減を補う制度の総称。退職金と公的給付の両方を含む
退職金会社の制度における退職給付金のひとつ
失業保険(基本手当)公的制度における退職給付金のひとつ

つまり退職金も失業保険も、退職給付金という大きな枠の中にある個別の制度です。ネット上で「退職給付金=退職金」と説明されていたり、「退職給付金=社会保険給付金」と説明されていたりするのは、この総称のうちどこを切り取っているかの違いにすぎません。

条件を調べるときは、「退職給付金の条件」ではなく「自分が対象になりそうな制度の条件」という単位で確認するのが正しい進め方です。

退職給付金をもらうための共通の条件

制度ごとに条件は異なりますが、公的制度における退職給付金には共通する前提条件があります。まずはこの土台を満たしているかどうかを確認しましょう。

社会保険・雇用保険に加入していたこと

公的制度における退職給付金は、保険料を支払ってきた人が受け取れる制度です。したがって、在職中に社会保険(健康保険)や雇用保険に加入していたことが大前提になります。

給付の種類必要な加入
傷病手当金健康保険(協会けんぽ・健保組合など)
失業保険、再就職手当、教育訓練給付金雇用保険

自営業やフリーランスとして国民健康保険に加入していた期間は、傷病手当金の対象になりません。また、雇用保険に加入していない働き方をしていた場合は、失業保険も受給できません。

自分が加入していたかどうかは、給与明細の控除欄で確認するのが確実です。雇用保険料や健康保険料が引かれていれば加入しています。手元に雇用保険被保険者証があるかどうかも判断材料になります。

パート・アルバイトでも加入していれば対象になる

雇用形態は関係ありません。パートやアルバイトであっても、週の所定労働時間が20時間以上などの要件を満たして雇用保険に加入していれば、正社員と同じように受給対象になります。「非正規だから対象外」と思い込んで申請しない方が一定数いますが、それは誤解です。

一定期間以上の加入実績があること

加入していただけでは足りず、それぞれの制度で定められた期間以上の加入実績が必要です。ここが実務上、もっとも判定が分かれるポイントになります。

雇用保険は離職前2年間で12か月以上

失業保険(基本手当)を受け取るには、原則として離職日以前の2年間に、被保険者期間が通算12か月以上必要です。被保険者期間は、賃金支払いの基礎となる日数が11日以上ある月を1か月として計算します。

ただし、倒産や解雇による離職(特定受給資格者)、契約更新がされなかった場合など正当な理由のある離職(特定理由離職者)に該当する場合は、離職日以前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あれば受給できます。

離職理由必要な被保険者期間
自己都合退職離職前2年間に通算12か月以上
会社都合退職・特定理由離職者離職前1年間に通算6か月以上

前職の加入期間を通算できるケースもあります。離職後、失業保険を受給せずに1年以内に再就職して雇用保険に加入した場合、前の加入期間が引き継がれます。転職を繰り返している方は、自分では条件を満たしていないと思っていても、通算すれば足りている可能性があります。

健康保険は継続して1年以上の加入

傷病手当金を退職後も継続して受け取るには、退職日までに健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あることが必要です。在職中に受給を始めるだけであれば加入期間の要件はありませんが、退職後も引き続き受給したい場合はこの1年要件が壁になります。

ここで注意したいのが「継続して」という点です。転職の際に空白期間があり、その間に国民健康保険へ切り替えていた場合、継続とみなされず期間がリセットされることがあります。入社してまもない方は、この要件を満たせるかどうかを事前に確認しておきましょう。

退職後に自分で申請手続きを行うこと

公的制度における退職給付金は、条件を満たしていても自動的には振り込まれません。原則としてすべて申請主義です。

制度申請先
傷病手当金加入していた健康保険(協会けんぽ、健保組合)
失業保険、再就職手当、高年齢求職者給付金住所地を管轄するハローワーク
教育訓練給付金住所地を管轄するハローワーク
住居確保給付金自治体の自立相談支援機関

申請には、会社が発行する書類が必要になるものもあります。傷病手当金の支給申請書には事業主の証明欄があり、失業保険には離職票が必須です。退職前に、どの書類をいつ発行してもらえるのかを人事担当者に確認しておくと、手続きがスムーズに進みます。

私が採用責任者として退職手続きを扱っていたときも、離職票の発行時期を退職者から質問されるケースは多くありました。会社によって対応スピードには差があるため、遠慮せずに依頼しておくことをおすすめします。

受給できる期限内に申請していること

見落とされがちですが、退職給付金には申請期限があります。条件を満たしていても、期限を過ぎれば受け取れません。

制度期限の目安
傷病手当金労務不能であった日ごとに、その翌日から2年で時効
失業保険(基本手当)離職日の翌日から1年間が受給期間
住居確保給付金離職・廃業から2年以内などの要件あり

とくに失業保険の受給期間は「1年以内に受け取り終える」必要があるため、申請が遅れると所定給付日数のすべてを受け取れなくなります。所定給付日数が長い方ほど影響が大きく、後回しにするほど損をする仕組みです。

【種類別】退職給付金の条件と支給額の目安

ここからは、公的制度における退職給付金を制度ごとに見ていきます。自分が該当しそうなものを中心に確認してください。複数の制度を組み合わせて受け取れるケースもあります。

傷病手当金の条件は療養と労務不能

傷病手当金は、病気やケガで働けなくなったときに、健康保険から支給される制度です。退職給付金の中でももっとも支給額が大きくなりやすく、心身の不調で退職を考えている方は必ず確認しておきたい制度です。

受給には、次の4つをすべて満たす必要があります。

  1. 業務外の病気やケガの療養のための休業であること
  2. 仕事に就くことができない状態(労務不能)であること
  3. 連続する3日間の待期を経て、4日目以降に休業していること
  4. 休業した期間について給与の支払いがないこと(支払いがあっても手当金より少ない場合は差額を支給)

支給額は、支給開始日以前12か月間の標準報酬月額を平均した額を30で割り、その3分の2に相当する額が1日あたりの目安です。おおむね給与の約3分の2と考えるとイメージしやすいでしょう。支給期間は、支給開始日から通算して1年6か月までです。

連続3日間の待期を含む4日以上の休業

傷病手当金には「待期」があります。連続して3日間仕事を休むことで待期が完成し、4日目以降の休業日から支給対象になります。

この3日間は連続している必要があり、土日祝日や有給休暇を使った日も含めてカウントできます。1日休んで出勤、また1日休むといった飛び石の休み方では待期が完成しません。ここを誤解して支給開始が遅れるケースは非常に多いので注意してください。

退職後も継続受給するための資格要件

在職中に受給を始めた傷病手当金は、退職後も引き続き受け取れる場合があります。ただし、次の条件を満たす必要があります。

  • 退職日までに健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること
  • 退職日の時点で傷病手当金を受けている、または受けられる状態であること
  • 退職日に出勤していないこと

とくに見落とされやすいのが3つ目です。最終出勤日に挨拶や引き継ぎのために出社してしまうと、継続給付の要件を満たさなくなる可能性があります。退職日を有給休暇や欠勤に充てる形にしておくことが重要です。この1点で数十万円単位の差が生まれることもあるため、退職日の設定は慎重に行ってください。

失業保険(基本手当)の条件は求職活動

失業保険(雇用保険の基本手当)は、働く意思と能力があるのに就職先が決まらない人の生活を支える制度です。

受給条件は次のとおりです。

  • 離職前2年間に被保険者期間が通算12か月以上あること(会社都合・特定理由離職者は離職前1年間に通算6か月以上)
  • 積極的に就職しようとする意思があること
  • いつでも就職できる能力があること
  • 求職活動を行っているにもかかわらず就職できない状態であること

支給額は、離職前6か月間の賃金をもとに算出した賃金日額の50〜80%程度が1日あたりの目安です。賃金が低かった人ほど高い給付率が適用される仕組みになっています。

所定給付日数は、離職理由、年齢、被保険者期間によって決まります。

離職理由所定給付日数の範囲
自己都合退職90日〜150日
会社都合退職(特定受給資格者)90日〜330日

受給中は、原則4週間に1度の認定日にハローワークへ行き、失業の認定を受ける必要があります。この際、認定対象期間中に規定回数の求職活動実績が必要です。実績が足りないとその期間分は支給されないため、計画的に活動しておきましょう。

病気で働けない状態は対象外になる

失業保険は「すぐに働ける状態」であることが前提です。病気や療養中ですぐに働けない場合は受給できません。この場合は受給期間の延長申請を行い、働ける状態になってから受給を開始します。

再就職手当の条件は支給残日数3分の1以上

再就職手当は、失業保険の給付日数を残して早期に再就職した人に支給される一時金です。主な条件は次のとおりです。

  • 7日間の待期期間が満了したあとに就職または事業を開始したこと
  • 就職日の前日時点で、支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あること
  • 1年を超えて勤務することが確実であること
  • 原則として雇用保険の被保険者になること
  • 離職前の事業主や関連事業主に再び雇用されたものでないこと
  • 過去3年以内に再就職手当または常用就職支度手当を受けていないこと
  • 受給資格決定前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでないこと

支給額は、支給残日数に応じて変わります。

支給残日数支給率
所定給付日数の3分の2以上基本手当日額×残日数×70%
所定給付日数の3分の1以上基本手当日額×残日数×60%

なお、自己都合退職で給付制限がある場合、給付制限期間の最初の1か月間に就職したときは、ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介による就職でなければ対象になりません。転職サイトから直接応募して決まった場合は対象外となる可能性があるため、応募経路と入社日には注意が必要です。

高年齢求職者給付金の条件は65歳以上

65歳以上で離職した場合、失業保険(基本手当)ではなく高年齢求職者給付金の対象になります。

  • 65歳以上の高年齢被保険者であったこと
  • 離職前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あること
  • 失業の状態にあり、ハローワークで求職の申込みをしていること

支給は一時金で、被保険者期間が1年未満なら基本手当日額の30日分、1年以上なら50日分です。基本手当のように4週間ごとに受け取る形ではなく、一括で支給されます。

老齢年金との併給が可能な点も特徴です。年金を受け取りながらでも受給できるため、該当する方は必ず申請しておきましょう。

住居確保給付金の条件は収入・資産要件

住居確保給付金は、離職などにより家賃の支払いが困難になった人に対し、自治体が家賃相当額を大家へ直接支払う制度です。主な条件は次のとおりです。

  • 離職・廃業から2年以内、または本人の責によらず収入が減少していること
  • 世帯の収入額が基準額と家賃額の合計以下であること
  • 世帯の預貯金額が基準額以下であること
  • 誠実かつ熱心に求職活動を行うこと

支給期間は原則3か月で、一定の条件を満たすと最長9か月まで延長できます。収入や資産の基準額は自治体ごとに異なるため、住んでいる地域の自立相談支援機関に確認してください。

失業保険と併用できる場合もありますが、失業保険は収入として計算されるため、金額によっては基準を超えて対象外になることがあります。

教育訓練給付金の条件は指定講座の受講

教育訓練給付金は、厚生労働大臣が指定する講座を受講した場合に、受講費用の一部が支給される制度です。退職後のスキルアップやキャリアチェンジを考えている方向けの給付といえます。

種類主な条件支給額の目安
一般教育訓練給付金被保険者期間3年以上(初回利用は1年以上)受講費用の20%(上限あり)
特定一般教育訓練給付金被保険者期間3年以上(初回利用は1年以上)受講費用の40%(上限あり)
専門実践教育訓練給付金被保険者期間3年以上(初回利用は2年以上)受講費用の最大80%(上限あり)

離職者の場合、離職日の翌日から1年以内に受講を開始することが原則です。病気や育児などで受講できない事情があるときは、適用対象期間の延長申請ができます。

退職理由・状況別に受け取れる退職給付金の条件

ここまで制度別に見てきましたが、実際には「自分の退職理由だと何がもらえるのか」が知りたい方が多いはずです。状況別に整理します。

自己都合退職で受け取れる給付金と条件

キャリアアップや転職を理由に自ら退職した場合、受け取れる主な退職給付金は次のとおりです。

制度受給の可否
会社の退職金退職金規程を満たせば可(会社都合より減額される場合あり)
失業保険離職前2年間に被保険者期間12か月以上で可
再就職手当条件を満たせば可
教育訓練給付金条件を満たせば可

自己都合退職の場合、7日間の待期期間に加えて原則1か月の給付制限期間があります。この間は基本手当が支給されないため、当面の生活費は自分で確保しておく必要があります。

会社都合退職で優遇される受給条件

倒産、解雇、雇止めなどによる離職は、受給条件が大きく優遇されます。

  • 被保険者期間の要件が離職前1年間で6か月以上に緩和される
  • 給付制限がなく、待期期間7日間の満了後から支給対象になる
  • 所定給付日数が最大330日まで延長される
  • 国民健康保険料の軽減措置を受けられる場合がある

自己都合として処理されがちですが、実態として次のようなケースは特定受給資格者または特定理由離職者に該当する可能性があります。

  • 賃金の未払いや大幅な減額があった
  • 一定水準を超える時間外労働が続いた
  • 上司や同僚からハラスメントを受けた
  • 契約更新の上限に達して雇止めになった
  • 職場の状況により心身の健康を損ねた

私が採用側として離職票を扱ってきた経験からも、実態と記載がずれているケースは決して珍しくありません。タイムカードの記録、給与明細、医師の診断書、社内のやり取りが残ったメールなどが判断材料になります。心当たりがあるなら、離職票の記載を鵜呑みにせず窓口で相談する価値があります。

病気・ケガで退職する場合の条件

心身の不調で退職する場合、受け取れる可能性がある退職給付金は次のとおりです。

制度ポイント
傷病手当金退職日までに継続1年以上の加入があれば退職後も継続受給が可能
失業保険すぐに働けないため、受給期間の延長申請を行う
障害年金障害の状態が一定以上に該当する場合に対象

重要なのは順番です。働けない期間はまず傷病手当金を受け取り、回復して働ける状態になってから失業保険に切り替えるのが基本的な流れになります。この2つは同時には受給できません。

失業保険の受給期間は原則1年ですが、働けない状態が30日以上続く場合は延長申請により最長3年(本来の1年と合わせて最長4年)まで延ばせます。延長申請には期限があるため、退職後に働ける見込みが立たないときは早めにハローワークへ相談してください。

介護・出産を理由に退職する場合の条件

家族の介護や出産、育児を理由に退職する場合も、活用できる制度があります。

介護や育児を理由とする離職は、正当な理由のある自己都合退職として特定理由離職者に該当する可能性があります。認められれば給付制限がなくなり、被保険者期間の要件も緩和されます。

ただし、退職直後は介護や育児に専念してすぐには働けないケースがほとんどです。その場合は失業保険の受給期間延長を申請し、落ち着いてから受給を開始する形になります。延長申請をせずに1年が経過すると、受け取れるはずだった日数が消えてしまうため注意が必要です。

条件を満たしていても退職給付金がもらえないケース

制度上の条件を満たしていても、実際には受給できない、あるいは受け取れる額が減ってしまうケースがあります。ここは事前に知っておかないと取り返しがつかない部分です。

傷病手当金と失業保険は同時に受給できない

もっとも多い誤解が、傷病手当金と失業保険を同時に受け取れるという思い込みです。この2つは併給できません。

理由はシンプルで、それぞれの制度が前提とする状態が正反対だからです。

制度前提となる状態
傷病手当金病気やケガで働けない状態
失業保険働く意思と能力があり、すぐに働ける状態

働けないから傷病手当金を受け取っているのに、同時に「すぐ働ける」と申告して失業保険を受け取ることは、制度上あり得ません。両方を申請すれば不正受給として扱われます。

正しい進め方は、順番に受け取ることです。まず療養期間中は傷病手当金を受給し、回復して働ける状態になった時点で失業保険の受給期間延長を解除し、求職の申込みを行います。この順序を守れば、結果として受給できる期間を長く確保できます。

すぐに働ける状態でないと基本手当は対象外

失業保険は「働く意思」と「働ける能力」の両方が求められます。次のような状態では、条件を満たさないと判断されます。

  • 病気やケガの治療中で就労できない
  • 妊娠、出産、育児のためすぐには働けない
  • 家族の介護に専念しており就職活動ができない
  • 学業に専念している
  • 自営業の準備を進めている、または開業している
  • 就職する意思がなく、当面は休養したいと考えている

このうち治療中や育児中などのケースは、受給期間の延長申請をすれば後から受け取れます。問題は、延長申請を知らないまま1年を経過してしまうパターンです。この場合、受給する権利そのものが消滅します。

「しばらく休んでから就職活動を始めたい」と考えている方こそ、退職後すぐにハローワークで延長申請について相談しておくべきです。

退職後に扶養へ入ると受給できない場合がある

退職後に配偶者の健康保険の扶養に入る方は注意が必要です。扶養に入るには年間収入の見込みが一定額以下である必要があり、失業保険の基本手当日額が基準を超えると扶養から外れることになります。

一般的には、基本手当日額が3,612円以上の場合、被扶養者の認定基準を超えるとして扶養に入れない扱いになります(基準は加入している健康保険によって異なります)。

対応としては次の2つが考えられます。

  • 給付制限期間中や受給期間延長中は扶養に入り、受給が始まるタイミングで外れる
  • 扶養に入らず、国民健康保険または任意継続を選択する

いずれにしても、扶養に入る手続きの際に失業保険を受給する予定であることを申告してください。申告せずに受給を続けると、後から遡って扶養が取り消され、医療費の返還を求められることがあります。

申請が遅れて時効を迎えてしまうケース

退職給付金には、それぞれ時効や期限が定められています。条件を満たしていても、期限を過ぎれば受け取れません。

制度期限
傷病手当金労務不能であった日ごとに、その翌日から2年
失業保険離職日の翌日から1年(延長申請で最長4年)
再就職手当就職日の翌日から2年
住居確保給付金離職・廃業から2年以内などの要件あり

とくに失業保険は、受給期間の1年以内に受け取り終える必要があります。所定給付日数が150日ある人が、離職から10か月後に手続きを始めても、残りの2か月分しか受け取れません。

「落ち着いてから手続きしよう」という先延ばしが、そのまま損失につながる制度設計になっています。離職票が届いたら、まずハローワークへ行くことを最優先にしてください。

退職給付金の申請手順と必要書類

最後に、実際の手続きの流れを整理します。制度によって窓口が異なるため、自分が申請するものを確認しながら進めてください。

退職前に確認・準備しておくこと

退職給付金は、退職前の準備で受け取れる額が変わります。在職中にやっておきたいことは次のとおりです。

  • 就業規則や退職金規程を確認し、退職金の有無と支給条件を把握する
  • 健康保険の加入期間が継続1年以上あるかを確認する
  • 雇用保険の被保険者期間が要件を満たしているかを確認する
  • 心身の不調がある場合は、在職中に医療機関を受診し記録を残す
  • 離職票の発行時期を人事担当者に確認しておく
  • 退職日に出勤しない形で調整できるか検討する(傷病手当金の継続受給を狙う場合)

とくに傷病手当金を考えている方は、在職中に受診して労務不能の状態を医師に確認してもらうことが前提になります。退職してから初めて受診するのでは、在職中の状態を証明できません。

申請先は健康保険とハローワークで異なる

制度ごとの申請先と主な必要書類は次のとおりです。

制度申請先主な必要書類
傷病手当金加入していた健康保険傷病手当金支給申請書(本人記入欄・医師の意見書・事業主の証明)
失業保険住所地のハローワーク離職票1・2、本人確認書類、証明写真、本人名義の通帳
再就職手当住所地のハローワーク再就職手当支給申請書、受給資格者証、採用証明書
教育訓練給付金住所地のハローワーク支給申請書、受講修了証明書、領収書
住居確保給付金自治体の自立相談支援機関申請書、本人確認書類、収入・資産が確認できる書類、賃貸借契約書

必要書類は加入先や自治体によって異なる場合があります。申請前に窓口で確認しておくと二度手間を防げます。

申請から入金までのスケジュール目安

入金までにかかる期間は制度によって差があります。

制度入金までの目安
傷病手当金申請書提出から2週間〜1か月程度(初回はさらにかかる場合あり)
失業保険(会社都合)手続きから約1か月後に初回振込
失業保険(自己都合)手続きから約1か月半〜2か月後に初回振込
再就職手当申請から1〜2か月程度

いずれも、退職してすぐに入金されるわけではありません。退職日から最初の入金まで、少なくとも1か月から2か月の空白期間が生じると考えて資金計画を立ててください。この空白期間を見誤って生活が苦しくなり、条件の合わない転職先に飛びついてしまう方を何人も見てきました。

給付金サポート業者を使う前に知るべき注意点

退職給付金の申請を代行、またはサポートすると謳う民間業者が増えています。利用を検討する前に、次の点を理解しておいてください。

まず、報酬を得て社会保険の申請書類の作成や提出代行ができるのは、社会保険労務士または社会保険労務士法人に限られます。無資格の業者が代行すれば法に触れる可能性があり、実際には「アドバイス」や「情報提供」という位置づけでサービスが提供されているのが実情です。

まとめ:退職給付金の条件を正しく理解し受け取れるお金を取りこぼさないようにしよう

退職給付金の条件について、要点を整理します。

  • 退職給付金とは、離職や休職時の収入減を補う制度の総称で、会社の退職金と公的な社会保険給付金の両方を含む
  • 公的制度は健康保険・雇用保険への加入と、一定期間以上の加入実績が共通の前提条件
  • 傷病手当金は継続3日の待期と労務不能、退職後の継続受給には継続1年以上の加入が必要
  • 失業保険は離職前2年間に12か月以上の被保険者期間と、働く意思・能力・求職活動が条件
  • 傷病手当金と失業保険は併給できず、順番に受け取るのが基本
  • すべて申請しなければ支給されず、時効や受給期間の制限がある
  • サポート業者を使わなくても、自分で無料で申請できる

退職給付金でもっとももったいないのは、条件を満たしていたのに知らずに申請しなかったケースです。制度は複雑ですが、窓口で「自分は何を受け取れますか」と聞けば、担当者が状況に応じて案内してくれます。まずは相談してみることを強くおすすめします。

そして、給付金はあくまで次の一歩を選ぶための時間を買う手段です。私自身、会社員からフリーランス、そして経営者へとキャリアを変えてきましたが、金銭的に追い詰められた状態で決めた選択は、後から見返すとたいてい妥協が混じっています。制度で生活の土台を確保しつつ、並行して情報収集を進めておくことが理想です。

求人を眺めておくだけでも、市場価値の相場観がつかめて判断がしやすくなります。求人数が多くスカウト機能も使えるリクナビNEXTのような転職サイトに登録しておけば、給付を受けながら次の選択肢を比較検討できます。焦って決めるのではなく、納得できる次のキャリアを選んでください。

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この記事を書いた人

木本旭洋のアバター 木本旭洋 株式会社イールドマーケティング代表取締役

株式会社イールドマーケティング代表。大手広告代理店でアカウントプランナー、スタートアップで広告部門のマネージャーを経験後、2022年に当社を創業。AI/Webマーケティング支援を得意としている。会社員(大手とスタートアップ)/フリーランス/経営者/採用責任者すべて経験しておりキャリア情報も発信。

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