「そろそろ会社を辞めたい。でも、退職はいつ伝えるのが正解なんだろう」
結論から言うと、退職の意思は退職希望日の2〜3ヶ月前に伝えるのが最も無難です。法律上は2週間前でも退職できますが、実務では引き継ぎや後任の確保に時間がかかるため、余裕を持った申し出のほうがトラブルになりません。
この記事では、法律と就業規則それぞれのルール、雇用形態や役職ごとの目安、退職日から逆算した具体的なスケジュールまで整理して解説します。読み終える頃には、あなたが「いつ、誰に、何を言えばいいのか」がはっきりしているはずです。
退職は何ヶ月前に伝えるのが正解?結論は2〜3ヶ月前
退職を伝える時期には、「法律のルール」「就業規則のルール」「実務上の慣例」という3つの層があります。この3つを混同すると判断を誤るため、まずは順番に整理していきましょう。
結論の目安は次のとおりです。
| 基準 | 申し出の期限 |
|---|---|
| 法律(民法) | 2週間前 |
| 就業規則 | 1〜3ヶ月前が多い |
| 円満退職の実務 | 2〜3ヶ月前 |
法律では2週間前の申し出で退職できる
期間の定めのない雇用契約(いわゆる正社員など)の場合、民法第627条により、退職の申し入れから2週間が経過すれば雇用契約は終了します。会社の合意や承認は必要ありません。
これは正社員に限った話ではなく、期間の定めがなければアルバイトやパートでも同様です。「辞めさせてもらえない」という状況は、法律上は基本的に発生しないと考えて問題ありません。
ただし、2週間前の申し出はあくまで法律が保障する最低ラインです。実際には離職票や源泉徴収票などの書類手続き、社会保険の資格喪失処理、後任への引き継ぎなど、事務的に時間を要する作業が並行して走ります。ギリギリの申し出は、あなた自身が損をするリスクもあると理解しておきましょう。
就業規則は1〜3ヶ月前としている企業が多い
多くの企業は就業規則で「退職する場合は1ヶ月前までに申し出ること」と定めています。企業によっては2ヶ月前、3ヶ月前としているケースもあり、特に人員の補充が難しい業界や、役職者に対しては長めの期間を設定している傾向があります。
まずやるべきことは、自社の就業規則を確認することです。社内ポータルや共有フォルダに置かれているのが一般的で、見当たらなければ人事部に問い合わせれば閲覧できます。労働基準法上、就業規則は従業員がいつでも確認できる状態にしておく義務があるため、「見せてもらえない」ということはありません。
法律と就業規則はどちらが優先されるのか
法的な効力としては、民法の規定が優先されると考えられています。就業規則に「3ヶ月前までに申し出ること」と書かれていても、2週間前の申し出で退職すること自体は可能です。
とはいえ、これは「揉めたときに最終的にどうなるか」という話です。実務では就業規則に沿って動いたほうが摩擦は起きませんし、引き継ぎを放り出した形で辞めれば、業界内での評判に響くこともあります。法律は最後の切り札として知っておき、通常は就業規則に沿って進めるのが賢明です。
円満退職なら2〜3ヶ月前がベストな理由
実務目線で最もバランスが良いのが、2〜3ヶ月前の申し出です。理由は、会社側が退職までに踏むべき手順を逆算すると、この程度の期間が必要になるためです。
会社側は退職の申し出を受けたあと、次のような対応を進めます。
- 上長から人事部門への報告と社内承認(1〜2週間)
- 後任者の選定または採用活動の開始(数週間〜1ヶ月以上)
- 後任者への引き継ぎ期間の確保(2週間〜1ヶ月)
- 取引先への担当変更の連絡
採用責任者として実感するのは、後任の確保が最も読めない工程だということです。社内異動で埋められれば早いものの、外部から採用する場合は募集から入社まで2ヶ月前後かかることも珍しくありません。2〜3ヶ月前の申し出は、この現実的な所要期間に沿った数字なのです。
また、あなた自身にとってもメリットがあります。有給休暇の消化を交渉する余地が生まれ、引き継ぎ資料を落ち着いて作成でき、最終出社日までのスケジュールを自分でコントロールしやすくなります。
伝えるのが早すぎる・遅すぎるとどうなる
早すぎる場合(半年以上前など)のリスク
半年以上前に伝えると、「まだ時間があるから気が変わるだろう」と受け止められ、繰り返し引き止められる可能性があります。また、退職予定者として扱われることで重要な案件から外されたり、評価や昇給の対象から外れたりすることも起こり得ます。職場での気まずさが長期化する点も見逃せません。
遅すぎる場合(2週間前など)のリスク
引き継ぎが不十分なまま退職することになり、後任や同僚に負担が集中します。有給休暇が残っていても消化しきれず、そのまま失効するケースもあります。強い引き止めや退職日の延期を求められ、交渉が難航することも考えられます。
早すぎず遅すぎない着地点として、2〜3ヶ月前という目安が定着しているわけです。
【ケース別】退職を何ヶ月前に伝えるかの目安
2〜3ヶ月前はあくまで一般的な目安であり、雇用形態や役職によって適切な時期は変わります。自分がどのケースに当てはまるかを確認しておきましょう。
一般社員は1〜2ヶ月前でも問題ない
役職に就いていない一般社員で、担当業務の引き継ぎが数人規模で完結するのであれば、1〜2ヶ月前の申し出でも十分に対応可能です。就業規則が「1ヶ月前まで」となっている企業であれば、それに従えばマナー違反にはなりません。
ただし、担当している案件の規模が大きい場合や、あなたしか対応できない業務がある場合は、2ヶ月以上前に伝えておくほうが安全です。目安として、「自分が明日いなくなったら困る人が何人いるか」を考えると判断しやすくなります。
管理職・役職者は3〜6ヶ月前が目安
部長・課長・店長といった管理職や、チームを預かるポジションの場合は、3ヶ月前から半年前を目安に伝えるのが望ましいです。
理由は、後任の選定に時間がかかるためです。管理職の後任は社内から登用するにせよ外部から採用するにせよ、経営層の判断や組織全体の人事調整を伴います。加えて、部下の評価や予算管理など、期単位で区切ったほうが引き継ぎやすい業務も多いため、期末に合わせた退職日を設定するケースもよく見られます。
また、年俸制で契約期間が定められている場合は、契約更新のタイミングを踏まえた申し出が必要になることもあります。契約書の内容を必ず確認してください。
契約社員は契約期間の満了時期に注意
契約社員のように期間の定めがある雇用契約では、原則として契約期間の途中で一方的に退職することはできません。契約満了をもって退職するのが基本の流れになります。
そのため、伝えるタイミングは「更新の意思確認をされたとき」が最も自然です。多くの企業では契約満了の1〜2ヶ月前に更新の意向を確認するため、その場で更新しない旨を伝えれば、円滑に手続きが進みます。
派遣社員は派遣会社へ1〜2ヶ月前に相談
派遣社員の場合、雇用契約を結んでいるのは派遣先ではなく派遣元(派遣会社)です。したがって、退職の意思はまず派遣会社の担当者に伝えます。派遣先の上司に直接伝えるのは順序が違うため注意しましょう。
タイミングとしては、契約更新の1〜2ヶ月前が目安です。派遣会社は後任スタッフの手配を行う必要があるため、早めに相談しておくと関係を良好に保ったまま契約を終えられます。
パート・アルバイトは1ヶ月前が一般的
パート・アルバイトも期間の定めがなければ法律上は2週間前で退職できますが、シフト作成の都合を考えると1ヶ月前の申し出が現実的です。翌月のシフトが確定する前に伝えられれば、店舗側も人員調整をしやすくなります。
学業や家庭の事情など、辞める時期があらかじめ決まっている場合は、さらに早めに共有しておくと引き止められにくくなります。
引き継ぎがなければ1ヶ月前でもよい
入社して間もない場合や、担当業務が定型的で誰でも引き継げる場合、あるいは有給休暇の残日数が少ない場合は、1ヶ月前の申し出で十分なこともあります。
重要なのは月数そのものではなく、「引き継ぎに必要な期間+有給消化に必要な日数」を確保できているかという点です。この2つを足し合わせた日数から逆算すれば、自分にとって適切な申し出時期が見えてきます。
退職日から逆算する3ヶ月間のスケジュール
ここからは、退職希望日の3ヶ月前に意思を伝えるケースを例に、実際の流れを時系列で見ていきます。期間が2ヶ月の場合も、各工程を圧縮すれば同じ順序で進められます。
3ヶ月前:直属の上司に退職の意思を伝える
最初のアクションは、直属の上司への申し出です。事前に「ご相談したいことがあるので、30分ほどお時間をいただけますか」とアポイントを取り、個室や会議室など落ち着いて話せる場所を確保しましょう。
この段階では退職願を提出せず、口頭で意思を伝えるだけでも構いません。会社によっては書面の提出タイミングが決まっているため、上司の指示を確認してから動くとスムーズです。
申し出のあと、上司から部門長や人事部へ報告が上がり、社内で承認されるまでには1〜2週間程度かかるのが一般的です。すぐに返事がなくても、通常のプロセスだと考えて問題ありません。
2ヶ月前:退職日を確定し退職届を提出する
社内で承認が下りたら、上司と相談しながら正式な退職日を決めます。このとき合わせて確認したいのが、有給休暇の残日数と最終出社日です。
退職日と最終出社日は別物です。有給休暇を消化する場合、最終出社日のあとに有給消化期間があり、その後に退職日が来る形になります。ここを曖昧にしたまま進めると、有給が消化しきれないまま退職日を迎えてしまうため、必ず数字で確認しておきましょう。
退職日が確定したら、会社所定の様式または一般的な書式で退職届を提出します。
1ヶ月前:後任者への引き継ぎを開始する
後任者が決まったら、引き継ぎを本格的に開始します。口頭の説明だけで終わらせず、引き継ぎ書を作成しておくと、退職後の問い合わせを大幅に減らせます。
引き継ぎ書に盛り込みたい項目は次のとおりです。
- 担当業務の一覧と各業務の目的
- 定期業務のスケジュール(日次・週次・月次)
- 取引先や関係部署の連絡先と担当者名
- 使用しているツールやアカウントの情報
- 過去のトラブル事例と対応方法
- 進行中の案件の現状と今後の想定
2週間前:取引先への挨拶と有給消化に入る
社外の取引先には、後任者を伴って挨拶に回るか、メールで担当変更を連絡します。連絡のタイミングは会社の方針に従い、独断で先に伝えないよう注意してください。
社内への周知は、上司から正式にアナウンスされたあとに行うのが原則です。順序を飛ばして同僚に先に話してしまうと、上司の立場を悪くしてしまいます。
最終出社日には、備品の返却や関係者への挨拶を済ませます。その後、残っている有給休暇の消化期間に入ります。
退職日:貸与品の返却と必要書類の受け取り
退職日には、会社から借りているものを返却し、必要な書類を受け取ります。
返却するもの
- 健康保険被保険者証
- 社員証、入館カード
- 名刺(自分の分と受け取った分)
- 制服、社用PC、携帯電話などの貸与品
- 業務資料やデータ
受け取るもの
- 雇用保険被保険者証
- 年金手帳(会社が預かっている場合)
- 離職票(失業保険を受給する場合)
- 源泉徴収票
- 退職証明書(必要に応じて)
離職票・源泉徴収票は退職後に届く
離職票と源泉徴収票は、退職日当日には受け取れないのが一般的です。離職票は会社がハローワークに手続きをしたあとに発行されるため、退職から2週間程度かかります。源泉徴収票も最後の給与が確定してから発行されるため、後日郵送となるケースがほとんどです。
失業保険の申請を予定している場合は、離職票がいつ頃届くのか、どの住所に送られるのかを退職前に確認しておくと安心です。転居予定がある場合は、必ず新しい住所を伝えておきましょう。
退職を伝える時期を決める前に確認すべき4つのこと
「2〜3ヶ月前」という目安が分かっても、自分の場合に当てはめると迷いが出てくるはずです。申し出の日を決める前に、次の4点を確認しておきましょう。ここを押さえておくと、上司との面談でも話が早く進みます。
就業規則の申し出期限を必ず確認する
最初に確認すべきは、自社の就業規則です。「退職」または「休職・退職」といった章に、申し出の期限が明記されています。
確認したいのは次の3点です。
- 退職の申し出は何日前までとされているか
- 申し出は口頭でよいのか、書面が必要か
- 提出先は直属の上司か、人事部か
期限が「1ヶ月前」であれば、そこに引き継ぎと有給消化の期間を足して逆算すれば、無理のない申し出日が決まります。「3ヶ月前」と長めに設定されている場合でも過度に構える必要はありませんが、その期間を前提に交渉を始めたほうが話はスムーズです。
就業規則が見つからない場合は、人事部門に「退職の手続きについて確認したい」と伝えれば閲覧できます。ただし、この問い合わせ自体が退職の意思表示と受け取られる可能性はあるため、上司に伝える前に動くなら、社内ポータルなどで自分で探すほうが無難です。
有給休暇の残日数を退職日に組み込む
見落とされがちですが、退職を伝える時期を左右する最大の要素が有給休暇の残日数です。
有給休暇は労働者の権利であり、退職時にまとめて消化することも認められています。会社には時季変更権がありますが、退職日以降に振り替えることはできないため、退職前の有給消化を拒否することは実質的にできません。
問題は日数です。仮に20日残っていれば、営業日換算で約1ヶ月分になります。つまり、引き継ぎに1ヶ月かかるなら、最終出社日から逆算して合計2ヶ月以上の期間が必要になる計算です。
逆算の考え方
まずは給与明細や勤怠システムで残日数を確認してください。この数字が分かっていないと、面談の場で退職日を決められず、二度手間になります。
なお、有給が多く残っている場合は「買い取ってほしい」と考える方もいますが、退職時の買い取りは会社の任意であり、義務ではありません。原則は消化する前提でスケジュールを組みましょう。
繁忙期や人事異動の時期は避ける
法律上はいつ退職しても構いませんが、退職日の設定を工夫すると引き止められにくくなります。
避けたほうがよいのは、部署の繁忙期にあたる時期です。小売や飲食であれば年末年始や大型連休、経理であれば決算期、広告業界であれば期末のキャンペーン集中期などが該当します。繁忙期のただ中に抜けると、引き継ぎが形だけになり、後任にも自分にも負担が残ります。
逆に狙い目なのが、人事異動や組織変更のタイミングです。もともと担当が入れ替わる時期であれば、後任のアサインが自然に組み込まれ、会社側も対応しやすくなります。期の変わり目に退職日を設定できると、引き止めの理由が減り、話が通りやすくなる傾向があります。
ただし、心身の不調がある場合や、職場環境そのものに問題がある場合は話が別です。繁忙期を待って無理を重ねる必要はありません。優先すべきはあなたの健康です。
賞与の支給日と在籍条件を確認する
賞与(ボーナス)の支給を受けてから退職したい場合は、支給条件の確認が欠かせません。
多くの企業では、就業規則や賃金規程に「支給日に在籍していること」という条件が定められています。この場合、支給日の前日に退職すると賞与は支給されません。逆に、支給日に在籍していれば、翌日に退職しても支給対象になるのが原則です。
確認すべきポイントは次のとおりです。
- 支給日在籍要件があるかどうか
- 評価対象期間はいつからいつまでか
- 退職予定者に対する減額規定があるか
退職を切り出すときの伝え方と注意点
伝える時期が決まったら、次は伝え方です。同じ内容でも、順序と言い方によって相手の受け止め方は大きく変わります。ここを丁寧に進められるかどうかで、その後の2〜3ヶ月の過ごしやすさが決まると言っても大げさではありません。
最初に伝える相手は必ず直属の上司
退職の意思を最初に伝えるのは、直属の上司です。人事部や部門長、まして同僚が先になってはいけません。
理由はシンプルで、上司は部下の退職を上層部に報告し、後任の手配を進める責任を負っているからです。他のルートから先に情報が届くと、上司は管理責任を問われる立場に置かれます。この順序を守るだけで、その後の協力を得やすくなります。
私が採用責任者として見てきた中でも、退職の話がこじれるケースの多くは、伝える順序を誤ったことが発端でした。上司との関係が良くない場合でも、まずは形式として直属の上司に伝え、それでも話が進まないときに人事部へ相談するという段取りが安全です。
事前にアポを取り個室で話す
立ち話や業務の合間に切り出すのは避けましょう。「ご相談したいことがあり、30分ほどお時間をいただけないでしょうか」とチャットやメールでアポイントを取り、会議室など他の社員に聞かれない場所を確保します。
このとき、アポイントの依頼文に「退職の件で」と書く必要はありません。詳細は対面で伝えたほうが、上司も心の準備をした状態で話を聞けます。
リモートワーク中心の職場であれば、オンライン会議でも問題ありません。ただし、他の同席者がいない1対1の設定にすることと、チャットのテキストだけで済ませないことは意識してください。
面談で伝える内容の型
- 退職の意思が固まっていること
- 希望する退職日
- 引き継ぎに責任を持って対応する姿勢
- これまでの感謝
「退職を考えているのですが、どう思われますか」といった相談の形にすると、引き止めの余地を残すことになります。すでに決めているのであれば、意思として明確に伝えるほうが結果的に話が早く進みます。
退職理由は前向きな内容にまとめる
退職理由を正直に全て話す必要はありません。伝えるべきは、会社側が納得でき、引き止めようがない理由です。
避けたほうがよい伝え方
- 給与への不満
- 上司や同僚への不満
- 評価制度への不満
- 業務量や労働環境への不満
これらを理由にすると、「では改善するから残ってほしい」という条件提示につながり、話が長引きます。改善提案を断り続けるのは、精神的にも消耗する作業です。
通りやすい伝え方の例
- 別の分野に挑戦したいという意思
- 以前から関心のあった業界への転身
- 家庭の事情や生活環境の変化
- 自分のキャリアプランを踏まえた判断
いずれも「この会社では実現できないこと」に紐づけるのがポイントです。会社への不満ではなく自分の意思として語ることで、引き止めの糸口を作らずに済みます。
同僚への報告は上司の指示を待つ
退職が正式に決まるまで、同僚や他部署に自分から話すのは控えましょう。社内で承認が下りる前に噂として広がると、上司の立場を悪くし、あなた自身も居心地の悪い状況に置かれます。
社内への周知は、上司や人事部から正式にアナウンスされるのが通常の流れです。そのあとで、お世話になった方に個別に挨拶をしていけば十分です。
親しい同僚にだけ先に伝えたくなる気持ちは理解できますが、社内の情報は想像以上に早く伝わります。正式決定までは口外しないと決めておくのが安全です。
転職先が決まっていない場合の伝え方
転職先が未定でも、退職を伝えることに問題はありません。ただし、「まだ次が決まっていない」と伝えると、「決まってから辞めたほうがいい」という善意の引き止めを受けやすくなります。
この場合は、退職理由を次のように整理して伝えると話が進みやすくなります。
- 「一度腰を据えて今後のキャリアを考えたい」
- 「資格の取得や学び直しに集中する期間を取りたい」
- 「家庭の事情で一度離れる必要がある」
退職を伝えた後によくあるトラブルと対処法
退職の意思を伝えたあとに、想定外の展開になることがあります。ここでは実際に起こりやすい4つのケースと、その対処法を整理します。事前に知っておくだけで、いざというときの動揺はかなり減ります。
強く引き止められたときの断り方
最も多いのが引き止めです。上司の立場からすると、人員が減ることは部門の目標達成に直結するため、まずは慰留を試みるのが自然な反応でもあります。
引き止めの典型的なパターンは次の3つです。
条件提示型
「給与を上げる」「役職を用意する」「異動を検討する」といった条件を示されるケースです。魅力的に感じるかもしれませんが、いま提示された条件が本当に実現するのか、いつから適用されるのかを冷静に確認してください。口頭の約束だけで残った結果、条件が反映されなかったという話は珍しくありません。
情に訴える型
「今抜けられたら困る」「プロジェクトが終わるまで待ってほしい」といった訴えです。責任感が強い人ほど揺らぎますが、区切りの良いタイミングは待っていても訪れません。「引き継ぎには責任を持って対応します」と、退職の意思とは切り離して答えるのが有効です。
否定型
「そんな理由で辞めるのは甘い」「他所でも通用しない」といった言葉をかけられることもあります。これは応じる必要のない発言です。感情的に反論せず、「ご意見はありがたく受け止めますが、意思は変わりません」と繰り返すのが最も消耗しない対応です。
共通する対処は、理由を追加で説明しないことです。理由を足すほど反論の材料が増えます。同じ内容を落ち着いて繰り返すだけで、多くの場合は数回のやり取りで収束します。
就業規則より短い期間で辞めたい場合
「就業規則には3ヶ月前と書いてあるが、転職先の入社日が1ヶ月後」というケースもあります。
この場合、法的には民法の規定が優先されるため、2週間前の申し出で退職すること自体は可能です。ただし、いきなり法律を持ち出すと関係が悪化しやすいため、次の順序で進めるのが現実的です。
- まず事情を説明し、退職日の相談として切り出す
- 引き継ぎ計画を自分から提示し、短期間でも支障が出ないことを示す
- 有給消化を短縮するなど、譲歩できる部分を提示する
- それでも折り合わない場合に、法律上のルールに触れる
実務では、引き継ぎの見通しを具体的に示せると話が通りやすくなります。「誰に、何を、いつまでに渡すか」を書面にして持参するだけで、上司の判断材料が揃うためです。
どうしても合意に至らない場合は、内容証明郵便で退職の意思を通知する方法もあります。ここまで進むケースは多くありませんが、選択肢として知っておくと精神的に楽になります。
退職日を一方的に延期されたときの対応
「後任が決まるまで待ってほしい」と、退職日を先送りされることがあります。一度承諾すると、次の理由でさらに延期を求められる可能性があるため、対応には注意が必要です。
まず確認すること
- 退職日について書面で合意した内容があるか
- 退職届を提出済みか、受理されているか
退職届を提出し、会社が受理していれば、原則として退職日は確定しています。受理されていない場合でも、申し出から2週間が経過すれば雇用契約は終了するというのが法律上の考え方です。
延期を求められた場合は、「退職日は◯月◯日で変更できません。その日までにできる引き継ぎは最大限対応します」と、代替案とセットで伝えるのが有効です。会社側が本当に困っているのは退職そのものではなく業務の穴であることが多いため、そこを埋める提案があれば話は前に進みます。
それでも一方的な延期を強いられる、退職届を受け取ってもらえないといった状況であれば、労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談してください。無料で相談できる公的な窓口です。
自分で伝えられないなら退職代行も選択肢
上司から強い圧力を受けている、体調を崩していて出社が難しい、何度伝えても取り合ってもらえないといった状況では、退職代行サービスを使う選択肢もあります。
退職代行は、本人に代わって退職の意思を会社に伝えるサービスです。運営元によって対応できる範囲が異なる点は押さえておきましょう。
| 運営元 | 対応範囲の目安 |
|---|---|
| 民間企業 | 退職の意思を伝達するのみ |
| 労働組合 | 有給消化や退職日などの交渉が可能 |
| 弁護士 | 交渉に加え、未払い賃金請求などの法的対応が可能 |
有給消化や退職日の調整まで求めるのであれば、労働組合または弁護士が運営するサービスを選ぶのが安全です。民間企業のサービスは交渉権を持たないため、条件面で揉めている場合は対応しきれないことがあります。
一方で、通常の職場環境であれば、退職代行を使わずに自分で伝えたほうが後の手続きは円滑です。離職票などの書類受け取りや、業界内での関係を考えると、対話で進められるならそのほうが望ましいのは確かです。あくまで、心身の安全が優先される状況での選択肢と考えてください。
まとめ:退職は2〜3ヶ月前を目安に逆算して動き出そう
退職を何ヶ月前に伝えるべきかについて、あらためて整理します。
基本の目安
- 法律上は2週間前の申し出で退職できる
- 就業規則では1〜3ヶ月前としている企業が多い
- 円満に退職するなら2〜3ヶ月前がバランスの取れた時期
ケース別の目安
- 一般社員:1〜2ヶ月前
- 管理職・役職者:3〜6ヶ月前
- 契約社員:契約更新の意思確認のタイミング
- 派遣社員:契約更新の1〜2ヶ月前に派遣会社へ
- パート・アルバイト:1ヶ月前
申し出前に確認する4点
- 就業規則に定められた申し出期限
- 有給休暇の残日数
- 部署の繁忙期と人事異動の時期
- 賞与の支給日と在籍条件
大切なのは、月数そのものより逆算の考え方です。「引き継ぎに必要な期間+有給休暇の残日数+社内承認の期間」を足し合わせれば、あなたにとって適切な申し出日が具体的な日付として見えてきます。
私自身、大手企業とスタートアップの会社員、フリーランス、そして経営者と立場を変えてきましたが、退職の伝え方を丁寧に進めた職場とは、今も仕事上のつながりが続いています。辞め方は、次のキャリアに地続きでつながっていくものです。
退職日が見えてきたら、次の準備も並行して進めておきましょう。転職先を探すのであれば求人情報の収集を、一度離れて考える時間を取るのであれば失業保険や健康保険の切り替え手続きの確認を。退職を伝えることは終わりではなく、次に進むためのスタートです。
