退職を考え始めたときや、退職後の生活費が心配になったとき、「退職給付金」と「失業手当」という言葉を目にする方は多いはずです。どちらも退職後にもらえるお金というイメージはあっても、何が違うのか、両方もらえるのかまでは分かりにくいのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、退職給付金は退職後に受け取れる公的給付の総称であり、失業手当はその中に含まれる制度の1つです。つまり、「退職給付金か失業手当か」という二択ではなく、失業手当のほかにも、状況に応じて受け取れる公的制度がいくつもあります。
この記事では、退職給付金と失業手当の関係、退職給付金に含まれる主な制度、両方もらえるかどうか、申請手続きの流れまでを順番に解説します。
退職給付金と失業手当の違いとは?結論を解説
まずは、退職給付金と失業手当の関係を整理しておきましょう。この2つは並べて比べられることが多いものの、実際には「全体」と「その一部」という関係にあります。
| 項目 | 退職給付金 | 失業手当 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 退職後にもらえる公的給付の総称 | 退職給付金に含まれる制度の1つ |
| 正式な制度名 | なし(通称) | 雇用保険の基本手当 |
| 含まれる制度 | 失業手当、傷病手当金、再就職手当、教育訓練給付金など | 基本手当のみ |
| 申請先 | 制度によって異なる(ハローワーク、健康保険組合など) | ハローワーク |
退職給付金は退職後にもらえる公的給付の総称
「退職給付金」は、法律で定められた特定の制度名ではありません。退職をきっかけに、国の社会保険制度から受け取れる可能性のある給付金をまとめて呼ぶ言葉です。
代表的なものには、雇用保険の「失業手当」や「再就職手当」、健康保険の「傷病手当金」などがあります。それぞれ根拠となる法律も、受給条件も、申請先も異なります。
大切なのは、退職後の状況によって、受け取れる給付の組み合わせが変わるという点です。すぐに転職活動を始める方、病気やケガで療養が必要な方、スキルを身につけてから再就職したい方では、利用すべき制度がそれぞれ違います。
失業手当は退職給付金に含まれる制度の1つ
一般に「失業手当」や「失業保険」と呼ばれているのは、雇用保険の「基本手当」のことです。退職後に働く意思と能力があるにもかかわらず、仕事が見つからない方の生活を支え、再就職を後押しするための給付です。
退職給付金の中でも最も利用者が多く、知名度も高い制度のため、「退職給付金=失業手当」と思われがちです。しかし、失業手当はあくまで退職給付金の一部にすぎません。失業手当の対象にならない方でも、ほかの制度で給付を受けられる場合があります。
会社の退職金とは別物なので注意
「退職給付金」という言葉は、会社から支払われる「退職金」と混同されることがあります。しかし、この記事で扱う退職給付金は、国の公的制度による給付です。
| 項目 | 退職給付金(公的給付) | 退職金 |
|---|---|---|
| 支給元 | 国(雇用保険・健康保険など) | 勤務先の会社 |
| 根拠 | 雇用保険法・健康保険法などの法律 | 会社の就業規則・退職金規程 |
| 支給の有無 | 条件を満たせば誰でも対象 | 制度がない会社もある |
退職金は会社が任意で設けている制度のため、そもそも退職金制度がない会社もあります。一方、退職給付金は雇用保険や健康保険に加入していた方であれば、条件を満たすことで受け取れます。退職金がない会社を退職した方でも、公的な退職給付金は受け取れる可能性があるので、あきらめずに確認しましょう。
退職給付金に含まれる主な公的制度
ここからは、退職給付金に含まれる代表的な公的制度を5つ紹介します。それぞれの制度が「どんな人を対象に、何のために支給されるのか」を押さえておくと、自分が使える制度を判断しやすくなります。
| 制度名 | 根拠となる保険・制度 | 主な対象者 |
|---|---|---|
| 失業手当 | 雇用保険 | すぐに働ける状態で求職中の方 |
| 傷病手当金 | 健康保険 | 病気やケガで働けない方 |
| 再就職手当 | 雇用保険 | 失業手当の受給中に早期に再就職した方 |
| 教育訓練給付金 | 雇用保険 | 指定講座でスキルを身につける方 |
| 職業訓練受講給付金 | 求職者支援制度 | 雇用保険を受けられず職業訓練を受ける方 |
失業手当(雇用保険の基本手当)
失業手当は、雇用保険に加入していた方が退職し、再就職先を探している間の生活を支えるための給付です。
受給するための主な条件は、次のとおりです。
- 離職日以前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12ヶ月以上ある(倒産・解雇など会社都合の場合は、離職日以前の1年間に6ヶ月以上)
- 働く意思と能力があり、積極的に求職活動をしている
1日あたりの支給額(基本手当日額)は、退職前6ヶ月間の賃金をもとに計算され、おおむね賃金日額の50〜80%です。支給される日数(所定給付日数)は、年齢や雇用保険の加入期間、退職理由によって90〜330日の範囲で決まります。
傷病手当金(健康保険)
傷病手当金は、業務外の病気やケガで働けなくなった方の生活を支えるために、健康保険から支給される給付です。本来は在職中の制度ですが、一定の条件を満たせば、退職後も引き続き受け取れます。
支給額は、1日あたり標準報酬日額の約3分の2です。支給期間は、支給を開始した日から通算して最長1年6ヶ月です。
うつ病などの精神疾患や、長期の治療が必要な病気で退職した方にとって、大きな支えになる制度です。退職後も受け取るための条件については、後ほど「傷病手当金の申請手続きの流れ」で詳しく解説します。
再就職手当(雇用保険)
再就職手当は、失業手当の受給資格がある方が、早い段階で安定した仕事に就いた場合に支給される給付です。早期の再就職を後押しすることを目的としています。
主な条件は、失業手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上残っていること、1年を超えて勤務することが確実であることなどです。支給額は、失業手当の支給残日数に応じて、次のように決まります。
| 支給残日数 | 支給額 |
|---|---|
| 所定給付日数の3分の2以上 | 基本手当日額 × 支給残日数 × 70% |
| 所定給付日数の3分の1以上 | 基本手当日額 × 支給残日数 × 60% |
「失業手当を最後までもらいきらないと損」と考える方もいますが、再就職手当があるため、早く再就職しても給付がゼロになるわけではありません。
教育訓練給付金(雇用保険)
教育訓練給付金は、厚生労働大臣が指定した講座を受講・修了した場合に、受講費用の一部が支給される制度です。資格取得やスキルアップを目指す方を支援することを目的としています。
講座のレベルに応じて3種類があり、支給額は受講費用の20%から、条件を満たせば最大80%までと幅があります。
| 種類 | 対象となる講座の例 | 支給割合 |
|---|---|---|
| 一般教育訓練 | 簿記、TOEIC、ITパスポートなど | 受講費用の20% |
| 特定一般教育訓練 | 業務独占資格や速やかな再就職につながる講座 | 受講費用の40%(条件により最大50%) |
| 専門実践教育訓練 | 看護師、介護福祉士、専門職大学院など | 受講費用の50%(条件により最大80%) |
在職中だけでなく、退職後も原則として離職日の翌日から1年以内であれば利用できます。キャリアチェンジを考えている方は、退職前に対象講座を調べておくと安心です。
職業訓練受講給付金(求職者支援制度)
職業訓練受講給付金は、雇用保険の失業手当を受け取れない方が、ハローワークの支援を受けながら職業訓練を受講する場合に支給される給付です。
雇用保険の加入期間が足りない方や、フリーランスや自営業を辞めた方など、失業手当の対象にならない方のための制度です。訓練を受けている間、月10万円の職業訓練受講手当に加えて、通所手当などが支給されます。
失業手当とほかの退職給付金の違いを比較
前の見出しで紹介したとおり、退職給付金にはさまざまな制度が含まれます。ここでは、代表的な失業手当とほかの制度の違いを、「根拠と申請先」「受給条件」「金額と期間」の3つの観点から比較します。
制度の根拠と申請先の違い
退職給付金に含まれる制度は、根拠となる法律や保険が異なるため、申請先もそれぞれ違います。
| 制度名 | 根拠となる法律・保険 | 申請先 |
|---|---|---|
| 失業手当 | 雇用保険法 | ハローワーク |
| 傷病手当金 | 健康保険法 | 加入していた協会けんぽ・健康保険組合 |
| 再就職手当 | 雇用保険法 | ハローワーク |
| 教育訓練給付金 | 雇用保険法 | ハローワーク |
| 職業訓練受講給付金 | 求職者支援法 | ハローワーク |
多くの制度はハローワークが窓口ですが、傷病手当金だけは健康保険の制度のため、申請先が協会けんぽや健康保険組合になる点に注意しましょう。ハローワークで「傷病手当金を申請したい」と伝えても手続きはできません。
なお、雇用保険にも「傷病手当」という名前の似た制度があります。こちらは、失業手当の受給資格決定後に病気やケガで15日以上働けなくなった場合の給付で、健康保険の「傷病手当金」とは別物です。名前が似ているため、混同しないように気をつけましょう。
受給条件の違い
受給条件の中で特に大きな違いは、「働ける状態にあるか」と「雇用保険・健康保険の加入期間」です。
| 制度名 | 働ける状態か | 主な加入期間の条件 |
|---|---|---|
| 失業手当 | 働ける状態であること | 離職前2年間に雇用保険12ヶ月以上(会社都合は1年間に6ヶ月以上) |
| 傷病手当金 | 働けない状態であること | 退職後も受給する場合は、健康保険に継続して1年以上 |
| 再就職手当 | 再就職していること | 失業手当の受給資格があること |
| 教育訓練給付金 | 問わない | 雇用保険に原則3年以上(初めての場合は1〜2年以上) |
| 職業訓練受講給付金 | 働ける状態であること | 雇用保険の失業手当を受けられないこと |
失業手当は「すぐに働ける状態」であることが前提です。反対に、傷病手当金は「働けない状態」であることが前提になります。この違いが、次の見出しで解説する「同時にはもらえない」理由につながります。
受給できる金額と期間の違い
受給できる金額と期間も、制度によって大きく異なります。
| 制度名 | 支給額の目安 | 支給期間 |
|---|---|---|
| 失業手当 | 賃金日額の50〜80% | 90〜330日 |
| 傷病手当金 | 標準報酬日額の約3分の2 | 通算で最長1年6ヶ月 |
| 再就職手当 | 基本手当日額 × 支給残日数 × 60%または70% | 一括支給 |
| 教育訓練給付金 | 受講費用の20〜80% | 講座修了後などに支給 |
| 職業訓練受講給付金 | 月10万円 + 通所手当など | 訓練を受けている期間 |
支給期間が最も長いのは傷病手当金で、最長1年6ヶ月にわたって受け取れます。失業手当は、自己都合で退職した場合、雇用保険の加入期間が20年以上あっても最大150日です。
どちらを受け取るかによって総額が大きく変わるため、自分がどちらの状態に当てはまるのかを正しく判断することが大切です。
「すぐ働けるか」で使える制度が変わる
ここまでの比較を整理すると、退職後に使える制度は、「すぐに働ける状態かどうか」で大きく分かれることが分かります。
| 退職後の状態 | 主に利用できる制度 |
|---|---|
| すぐに働ける状態で、転職活動をする | 失業手当、再就職手当 |
| 病気やケガで、しばらく働けない | 傷病手当金 |
| スキルを身につけてから再就職したい | 教育訓練給付金、公共職業訓練 |
| 雇用保険の失業手当を受けられない | 職業訓練受講給付金 |
| 妊娠・出産・育児・介護ですぐに働けない | 失業手当の受給期間延長 |
たとえば、体調不良が原因で退職したのに、「退職後にもらえるお金=失業手当」と考えてハローワークで申請すると、「働ける状態ではない」と判断されて受給できない場合があります。この場合は、まず傷病手当金を受け取り、回復してから失業手当に切り替えるのが適切な流れです。
採用の現場でも、体調を崩して退職した方が、十分に回復しないまま焦って転職活動を始め、再び体調を崩してしまうケースは珍しくありません。退職後の状態に合った制度を選ぶことは、金銭面だけでなく、次のキャリアを安定させるうえでも重要です。
失業手当とほかの退職給付金は両方もらえる?
退職給付金に含まれる制度は、組み合わせによって「同時にもらえるもの」と「同時にはもらえないもの」があります。ここでは、特に質問の多い3つの組み合わせについて解説します。
| 組み合わせ | 同時受給 | ポイント |
|---|---|---|
| 傷病手当金 + 失業手当 | できない | 受給期間を延長すれば順番に受け取れる |
| 再就職手当 + 失業手当 | 残日数の分を一括で受け取る | 失業手当の残日数が多いほど支給額が増える |
| 教育訓練給付金 + 失業手当 | できる | 両方の条件を満たせば併用可能 |
傷病手当金と失業手当は同時にもらえない
傷病手当金と失業手当は、同時に受け取ることができません。前述のとおり、傷病手当金は「働けない状態」、失業手当は「働ける状態」であることが条件になっており、両方の条件を同時に満たすことはないためです。
ただし、どちらか一方しか受け取れないわけではありません。傷病手当金を受け取ったあとに、失業手当を受け取ることは可能です。そのために必要なのが、次に解説する「受給期間の延長」の手続きです。
受給期間の延長で順番に受け取れる
失業手当を受け取れる期間(受給期間)は、原則として離職日の翌日から1年間です。この1年を過ぎると、所定給付日数が残っていても失業手当は受け取れなくなります。
傷病手当金を1年近く受け取ってから失業手当を申請しようとすると、受給期間が足りなくなってしまうおそれがあります。そこで利用したいのが、受給期間の延長です。
病気やケガなどで30日以上働けない状態が続く場合、ハローワークで手続きをすれば、受給期間を最大3年間延長し、合計で最長4年間にできます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる理由 | 病気・ケガ、妊娠・出産、育児、親族の介護などで30日以上働けない |
| 延長できる期間 | 最大3年間(本来の1年と合わせて最長4年) |
| 申請先 | 住所地を管轄するハローワーク |
| 主な必要書類 | 受給期間延長申請書、離職票、働けないことを証明する書類(医師の診断書など) |
受給期間の延長を申請しておけば、傷病手当金で療養に専念し、回復してから失業手当を受け取って転職活動をする、という流れをつくれます。延長の申請は郵送や代理人でも行えることが多いため、療養中の方も早めに手続きしておきましょう。
再就職手当は失業手当の残日数で決まる
再就職手当は、失業手当の受給資格がある方が早期に再就職した場合に、失業手当の残りの日数に応じて支給される給付です。つまり、失業手当と再就職手当は、「失業手当の一部を受け取ったあと、残りを再就職手当として受け取る」という関係にあります。
支給額は、失業手当の支給残日数が多いほど増えます。たとえば、基本手当日額が5,000円、所定給付日数が90日の方の場合は、次のようになります。
| 再就職した時点の支給残日数 | 再就職手当の支給額 |
|---|---|
| 60日(3分の2以上) | 5,000円 × 60日 × 70% = 21万円 |
| 30日(3分の1以上) | 5,000円 × 30日 × 60% = 9万円 |
| 29日以下(3分の1未満) | 支給されない |
再就職手当を受け取るには、7日間の待期期間が終わってから就職すること、自己都合退職で給付制限期間中に就職する場合は最初の1ヶ月はハローワークなどの紹介で就職することなど、いくつかの条件があります。再就職先が決まりそうな段階で、ハローワークに条件を確認しておくと安心です。
また、再就職先の賃金が退職前より下がった場合は、「就業促進定着手当」を受け取れる場合もあります。再就職後6ヶ月間働き続けることなどが条件です。
教育訓練給付金は失業手当と併用できる
教育訓練給付金と失業手当は、それぞれの条件を満たしていれば両方受け取れます。失業手当を受け取りながら指定講座を受講し、修了後に教育訓練給付金を受け取る、という使い方が可能です。
退職後の空白期間を「資格取得やスキルアップの期間」にあてたい方にとって、組み合わせやすい制度といえます。ただし、教育訓練給付金は講座を修了してから支給されるのが基本のため、受講費用はいったん自分で立て替える必要がある点には注意しましょう。
退職給付金・失業手当の申請手続きの流れ
退職給付金は、条件を満たしていても自動的に振り込まれるわけではありません。どの制度も、自分で申請手続きを行う必要があります。ここでは、利用者の多い失業手当と傷病手当金について、申請の流れを解説します。
失業手当の申請手続きの流れ
失業手当は、住所地を管轄するハローワークで手続きを行います。一般的な流れは次のとおりです。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. 離職票を受け取る | 退職後、会社から離職票が届く(退職日から10日〜2週間ほどが目安) |
| 2. ハローワークで求職申込み | 離職票などを持参し、求職の申込みと受給資格の確認を受ける |
| 3. 待期期間 | 受給資格の決定日から7日間は支給されない |
| 4. 雇用保険受給者説明会に参加 | 受給ルールの説明を受け、雇用保険受給資格者証などを受け取る |
| 5. 失業認定を受ける | 原則4週間に1度、ハローワークで失業の認定を受ける |
| 6. 振り込み | 認定後、1週間ほどで指定口座に振り込まれる |
自己都合で退職した場合は、待期期間のあとに原則1ヶ月の給付制限期間があり、その後に支給が始まります。
失業認定を受けるには、認定日までの期間に原則2回以上の求職活動の実績が必要です。求人への応募のほか、ハローワークでの職業相談やセミナーへの参加なども実績として認められます。
受給期間は原則として離職日の翌日から1年間のため、離職票が届いたら、できるだけ早くハローワークで手続きを始めましょう。
傷病手当金の申請手続きの流れ
傷病手当金は、退職前に加入していた協会けんぽまたは健康保険組合に申請します。一般的な流れは次のとおりです。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. 申請書を入手する | 協会けんぽや健康保険組合のホームページなどから申請書を入手する |
| 2. 本人が記入する | 振込先口座や働けなかった期間などを記入する |
| 3. 医師に記入してもらう | 働けない状態であったことを、医師に証明してもらう |
| 4. 事業主に記入してもらう | 在職中の期間について、会社に勤務状況や給与の支払い状況を証明してもらう |
| 5. 申請書を提出する | 協会けんぽまたは健康保険組合に郵送などで提出する |
| 6. 審査・振り込み | 審査後、指定口座に振り込まれる |
退職後の期間だけを申請する場合は、事業主の証明は原則として不要です。申請は1ヶ月ごとなど、一定の期間をまとめて行うのが一般的です。
なお、傷病手当金には時効があり、働けなかった日ごとに、その翌日から2年を過ぎると申請できなくなります。療養中は手続きが後回しになりがちですが、早めの申請を心がけましょう。
退職後も受給を続けるための条件
傷病手当金は本来、健康保険に加入している在職中の方のための制度です。退職後も受け取るには、次の条件をすべて満たす必要があります。
- 退職日までに、健康保険の被保険者期間が継続して1年以上ある
- 退職日の時点で、傷病手当金を受け取っているか、受け取れる状態にある
- 退職日に出勤していない
特に注意したいのが、3つ目の「退職日に出勤していない」という条件です。退職日に挨拶や引き継ぎのために出勤すると、「働ける状態だった」とみなされ、退職後の傷病手当金を受け取れなくなる場合があります。
また、退職後に一度でも働ける状態になり、傷病手当金の支給が途切れると、その後に同じ病気で働けなくなっても、再び受け取ることはできません。退職日の過ごし方や療養中の働き方については、事前に加入している健康保険に確認しておくと安心です。
申請前に準備しておきたい書類
退職給付金の申請では、制度ごとに必要な書類が異なります。退職前から準備できるものもあるため、あらかじめ確認しておきましょう。
| 制度 | 主な必要書類 |
|---|---|
| 失業手当 | 離職票(1と2)、マイナンバーカード(ない場合は通知カードと本人確認書類)、証明写真2枚(マイナンバーカード提示で省略可)、本人名義の通帳またはキャッシュカード |
| 傷病手当金 | 傷病手当金支給申請書(本人・医師・事業主の記入欄あり)、本人名義の口座情報 |
| 受給期間の延長 | 受給期間延長申請書、離職票、働けないことを証明する書類(医師の診断書など) |
| 再就職手当 | 再就職手当支給申請書(再就職先の証明が必要)、雇用保険受給資格者証 |
離職票は会社を通じて発行されるため、退職時に「離職票を発行してほしい」と伝えておくことが大切です。特に59歳以上の方を除き、本人が希望しない場合は発行されないケースもあります。
傷病手当金の事業主記入欄も、退職後に会社とやり取りをするのは負担になりがちです。在職中の期間について申請する予定がある方は、退職前に会社の担当者に依頼しておくとスムーズです。
退職給付金サポートを利用する際の注意点
「退職給付金」について調べていると、「退職給付金サポート」や「社会保険給付金サポート」と呼ばれるサービスの広告を目にすることがあります。ここでは、こうしたサービスの概要と、利用前に確認したいポイントを解説します。
退職給付金サポートとはどんなサービス?
退職給付金サポートとは、退職後に受け取れる公的給付について、制度の説明や申請の進め方をサポートする有料サービスです。主に、傷病手当金や失業手当の受給を検討している方を対象にしています。
サービスの内容は運営会社によって異なりますが、一般的には次のようなサポートが含まれます。
- 自分が利用できる制度の確認
- 受給できる金額や期間の試算
- 退職日や申請のスケジュールに関するアドバイス
- 申請書類の書き方に関するサポート
手続きに不安がある方や、療養中で自分で調べる余裕がない方にとっては、心強い選択肢になる場合があります。一方で、費用がかかるサービスであるため、内容を理解したうえで利用を判断することが大切です。
利用前に確認したい3つのポイント
退職給付金サポートを利用する前に、次の3つのポイントを確認しておきましょう。
1. 費用の内訳と支払い条件
料金は、受給額の一定割合を支払う成功報酬型や、事前に費用を支払う前払い型などさまざまです。「総額でいくらかかるのか」「給付を受けられなかった場合に返金はあるのか」「途中で解約できるのか」を、契約前に必ず確認しましょう。
2. 社会保険労務士が関わっているか
社会保険の申請書類を作成したり、本人に代わって提出したりすることは、法律上、社会保険労務士の業務とされています。社会保険労務士が関わっていない運営会社は、申請書類の作成や提出代行はできません。どこまでのサポートを誰が行うのかを確認しておくと安心です。
3. 事実と異なる申請をすすめていないか
「必ず受給できる」「受給額を増やせる」といった表現や、実際の症状や状況と異なる内容で申請するようすすめるサービスには注意が必要です。事実と異なる内容で給付を受けると、不正受給として、受け取った給付の返還に加えてペナルティが科される場合があります。不正受給の責任を問われるのは、サービスの運営会社ではなく申請した本人です。
自分で申請する場合との違い
退職給付金は、サポートサービスを利用しなくても、自分で申請して受け取れます。ハローワークや協会けんぽ、健康保険組合での相談や申請は、すべて無料です。
| 項目 | 自分で申請する | サポートサービスを利用する |
|---|---|---|
| 費用 | 無料 | 有料(サービスにより異なる) |
| 相談先 | ハローワーク、協会けんぽ、健康保険組合など | サービスの担当者 |
| 手間 | 制度の調べものや書類の準備が必要 | 情報整理やスケジュール管理のサポートを受けられる |
| 受給額 | 制度で決まった額 | 制度で決まった額から費用を差し引いた額が手元に残る |
サービスを利用しても、制度で決まっている給付の金額そのものが増えるわけではありません。受け取れる制度が1つだけで手続きもシンプルな場合は、自分で申請したほうが手元に残るお金は多くなります。
一方で、傷病手当金から失業手当への切り替えなど、複数の制度を組み合わせる場合は、スケジュールや条件の管理が複雑になります。自分でハローワークや健康保険に相談しながら進められそうか、費用を払ってでもサポートを受けたいかを比べて判断しましょう。
まとめ:退職給付金と失業手当の違いを理解して損なく受け取ろう
退職給付金と失業手当は、「どちらか一方」を選ぶものではなく、失業手当が退職給付金に含まれる制度の1つという関係にあります。この記事のポイントを振り返ります。
- 退職給付金は、退職後にもらえる公的給付の総称であり、失業手当はその中の制度の1つ
- 退職給付金には、失業手当のほかに、傷病手当金、再就職手当、教育訓練給付金、職業訓練受講給付金などがある
- すぐに働ける方は失業手当、病気やケガで働けない方は傷病手当金が主な選択肢になる
- 傷病手当金と失業手当は同時にもらえないが、受給期間を延長すれば順番に受け取れる
- 再就職手当や教育訓練給付金は、失業手当と組み合わせて利用できる
- 退職給付金サポートを利用する場合は、費用や運営体制、申請内容の適切さを事前に確認する
退職は、キャリアにとっても生活にとっても大きな転機です。経済的な不安があると、焦って次の職場を決めてしまい、結果として自分に合わない選択をしてしまうこともあります。
退職給付金は、雇用保険や健康保険の保険料を納めてきた方が、正当に受け取れる給付です。自分の状況に合った制度を正しく理解し、ハローワークや健康保険の窓口も活用しながら、次の一歩に向けた準備を進めましょう。
