「失業保険をもらいながら、職業訓練でスキルを身につけられないだろうか」
退職後の生活費を気にしながら、次のキャリアに向けて準備したいと考える方は多いはずです。職業訓練は、条件を満たせば失業保険(雇用保険の基本手当)を受け取りながら、原則無料で受講できる公的制度です。受講中は給付期間の延長や給付制限の解除といった優遇も受けられるため、上手に活用すれば、お金の不安を抑えながら再就職の準備を進められます。
一方で、訓練には「公共職業訓練」と「求職者支援訓練」の2種類があり、対象者やもらえるお金がまったく異なります。ここを理解しないまま動くと、「思っていた給付が受けられなかった」という事態になりかねません。
失業保険をもらいながら職業訓練は受けられる
結論からお伝えすると、失業保険の受給資格がある方は、失業保険をもらいながら職業訓練を受講できます。
失業保険は本来、あらかじめ決められた日数(所定給付日数)分しか受け取れません。しかし、ハローワークの指示を受けて職業訓練に通う場合は、所定給付日数が終わった後も訓練が修了するまで支給が続きます。生活費の心配を減らしながら学びに集中できる点が、この制度の大きな魅力です。
まずは、職業訓練そのものの仕組みと種類を押さえておきましょう。
職業訓練(ハロートレーニング)とは
職業訓練とは、再就職に必要な知識や技能を身につけるための公的な訓練制度で、「ハロートレーニング」という愛称で呼ばれています。
受講料は原則無料で、自己負担はテキスト代や作業服代などの実費のみです。コースの分野は幅広く、主に次のような内容を学べます。
| 分野 | 主な訓練内容の例 |
|---|---|
| 事務系 | パソコン操作、経理、簿記、医療事務 |
| IT系 | プログラミング、Webデザイン、ネットワーク |
| 介護・福祉系 | 介護職員初任者研修、実務者研修 |
| ものづくり系 | 機械加工、溶接、電気設備、CAD |
| 建設・設備系 | 建築設計、ビル管理、住宅リフォーム |
未経験の職種に挑戦したい方や、前職のスキルを補強したい方にとって、費用をかけずに学び直せる貴重な機会といえます。
公共職業訓練と求職者支援訓練の違い
職業訓練は、受講する人が失業保険を受け取れるかどうかによって、2種類に分かれます。
| 項目 | 公共職業訓練 | 求職者支援訓練 |
|---|---|---|
| 主な対象者 | 失業保険を受給している方 | 失業保険を受給できない方 |
| 受講料 | 原則無料(テキスト代等は自己負担) | 原則無料(テキスト代等は自己負担) |
| 訓練中の生活支援 | 失業保険(基本手当)+各種手当 | 職業訓練受講給付金(月10万円)※要件あり |
| 訓練期間の目安 | 2カ月〜2年 | 2カ月〜6カ月 |
失業保険をもらいながら受講したい方が主に対象となるのは、公共職業訓練です。それぞれの特徴を詳しく見ていきます。
公共職業訓練は失業保険の受給者向け
公共職業訓練は、失業保険を受給している方が、基本手当を受け取りながら再就職に必要なスキルを習得するための訓練です。
訓練の実施主体は、国(ポリテクセンターなど)や都道府県の職業能力開発校のほか、国や都道府県から委託を受けた民間の専門学校やスクールもあります。施設で実施する訓練はものづくり系が中心で、民間に委託する訓練は事務やIT、介護などのオフィス系・サービス系が多い傾向です。
訓練期間は数カ月のコースが中心ですが、専門性の高い分野では1年から2年にわたるコースもあります。長期コースでも訓練修了まで失業保険が支給されるため、腰を据えて資格取得や技能習得を目指せます。
求職者支援訓練は受給できない人向け
求職者支援訓練は、失業保険を受け取れない方のための訓練です。たとえば、次のような方が対象になります。
- 失業保険の受給が終わった方
- 雇用保険の加入期間が足りず、受給資格を得られなかった方
- 自営業を廃業した方やフリーランスの方
- 就職を希望する主婦(主夫)の方
本人や世帯の収入、資産などが一定の要件を満たせば、「職業訓練受講給付金」として月10万円を受け取りながら受講できます。なお、収入要件などに当てはまらず給付金を受け取れない場合でも、訓練を受講すること自体は可能です。
訓練期間は公共職業訓練より短めのコースが多く、基礎から実践までをコンパクトに学べる構成になっています。
職業訓練受講給付金との併用はできない
ここで混同しやすいのが、失業保険と職業訓練受講給付金の関係です。
職業訓練受講給付金は、失業保険を受け取れない方の生活を支えるための制度です。そのため、失業保険を受給している期間中に、職業訓練受講給付金を同時に受け取ることはできません。「両方もらえば月の収入が増える」と考えていた方は注意しましょう。
整理すると、自分が受けられる生活支援は次のように決まります。
- 失業保険の受給資格がある方:公共職業訓練を受講し、失業保険と各種手当を受け取る
- 失業保険の受給資格がない方:求職者支援訓練を受講し、要件を満たせば職業訓練受講給付金を受け取る
また、名前が似ている「教育訓練給付金」も別の制度です。教育訓練給付金は、自分で費用を払って指定講座を受講し、修了後にその費用の一部が支給される仕組みです。受講料が原則無料の職業訓練とは性質が異なるため、混同しないようにしてください。
失業保険をもらいながら職業訓練を受ける条件
失業保険をもらいながら公共職業訓練を受講するには、ハローワークから「受講指示」を受ける必要があります。受講指示とは、ハローワークが「この方には職業訓練が必要」と認めて、受講を指示する手続きのことです。
受講指示なしに自分の判断で訓練に通っても、訓練延長給付などの優遇は受けられません。受講指示を受けるための主な条件は、次の4つです。
- ハローワークで求職申込みをしている
- ハローワークから受講指示を受けている(受講の必要性が認められている)
- 失業保険の支給残日数が一定以上ある
- 前回の訓練修了から1年以上経っている
順番に詳しく解説します。
ハローワークで求職申込みをしている
まず前提となるのが、ハローワークでの求職申込みです。
退職後、会社から届いた離職票をハローワークに提出し、求職の申込みと失業保険の受給手続きを済ませることで、受給資格者として扱われます。求職申込みをする前に訓練を申し込んでも、失業保険を受給しながら受講する形にはなりません。
退職後は、離職票が届いたらできるだけ早めにハローワークへ行きましょう。手続きが遅れると、そのぶん受講できる訓練の選択肢や、後述する支給残日数の条件に影響が出る可能性があります。
ハローワークから受講指示を受けている
受講指示を受けるには、ハローワークの職業相談で「訓練を受けることが再就職に必要」と判断される必要があります。
判断の際には、主に次のような点が見られます。
- 働く意思と能力があるか
- 希望する職種と訓練内容が結びついているか
- 現在のスキルだけでは希望職種への就職が難しいか
- 訓練を受けることで就職の可能性が広がるか
たとえば、事務職を目指す方が簿記やパソコンのコースを希望する場合は、必要性が認められやすいでしょう。反対に、希望職種と訓練内容の関連が薄い場合や、すでに十分なスキルを持っている場合は、受講の必要性を説明しにくくなります。
失業保険の支給残日数が一定以上ある
受講開始日の時点で、失業保険の支給残日数が一定以上残っていることも条件です。必要な残日数は、所定給付日数と給付制限の有無によって変わります。
| 所定給付日数 | 給付制限あり(主に自己都合退職)の場合に必要な残日数 | 給付制限なし(主に会社都合退職)の場合に必要な残日数 |
|---|---|---|
| 90日 | 31日以上 | 1日以上 |
| 120日 | 41日以上 | 1日以上 |
| 150日 | 51日以上 | 31日以上 |
| 180日 | 61日以上 | 61日以上 |
| 210日 | 71日以上 | 71日以上 |
| 240日 | 91日以上 | 91日以上 |
| 270日 | 121日以上 | 121日以上 |
| 330日 | 181日以上 | 181日以上 |
※基準はハローワークの案内資料をもとに作成。地域や個別の事情によって取り扱いが異なる場合があるため、最新の基準は管轄のハローワークで確認してください。
所定給付日数は、退職理由、年齢、雇用保険の加入期間などで決まります。自分の所定給付日数は、受給手続き後に受け取る「雇用保険受給資格者証」で確認できます。
注意したいのは、失業保険の受給が進むほど残日数は減っていくという点です。人気のコースは募集時期が限られるため、「気になるコースの開講を待っていたら残日数が足りなくなった」というケースも起こり得ます。訓練を検討している方は、受給手続きと同時に職業相談を始め、開講スケジュールから逆算して動くことが大切です。
前回の訓練修了から1年以上経っている
過去に公共職業訓練などを受講したことがある場合は、前回の訓練を修了した日の翌日から1年以上経っている必要があります。原則として、この期間内は新たに受講指示を受けられません。
ただし、ハローワークが特に必要と認めた場合に限り、求職者支援訓練から公共職業訓練へ続けて受講できるといった例外もあります。
短い期間に訓練を繰り返し受けられないからこそ、1回の受講で「何を身につけ、どの職種を目指すのか」を明確にしておくことが重要です。コース選びの段階でしっかり検討し、再就職に直結する訓練を選びましょう。
職業訓練中に失業保険でもらえるお金と金額
公共職業訓練を受講している間は、失業保険(基本手当)に加えて、条件に応じた各種手当を受け取れます。訓練中にもらえる主なお金は、次の4つです。
| 種類 | 内容 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 基本手当(失業保険) | 訓練期間中の生活費 | 離職前の賃金と年齢で決定 |
| 受講手当 | 訓練を受けた日ごとに支給 | 日額500円(上限あり) |
| 通所手当 | 訓練施設までの交通費 | 月額上限42,500円 |
| 寄宿手当 | 家族と別居して受講する場合の支援 | 月額10,700円 |
それぞれの内容と、どれくらいの金額になるのかを見ていきましょう。
基本手当(失業保険)の金額の目安
訓練中の生活を支える中心となるのが、基本手当です。1日あたりの支給額(基本手当日額)は、次の流れで計算されます。
- 離職前6カ月間の賃金合計(賞与を除く)を180で割り、「賃金日額」を出す
- 賃金日額に、年齢と賃金水準に応じた給付率(おおむね50〜80%、60〜64歳は45〜80%)を掛ける
給付率は賃金が低い方ほど高く設定されており、生活への影響が大きくならないよう配慮されています。また、基本手当日額には年齢ごとに上限額と下限額があり、毎年見直されます。
たとえば、離職前の月給が20万円だった30代の方の場合、おおよそのイメージは次のとおりです。
- 賃金日額:20万円×6カ月÷180=約6,667円
- 基本手当日額:約4,900円前後
- 4週間(28日)分の支給額:約13万7,000円前後
※上限額・下限額や給付率の基準は毎年改定されるため、あくまで目安です。正確な金額は雇用保険受給資格者証に記載された基本手当日額で確認してください。
基本手当は、訓練期間中はおおむね4週間ごとにまとめて振り込まれます。前職の給与と比べると手取りは下がるケースが多いため、訓練期間中の生活費は事前にシミュレーションしておくと安心です。
受講手当は1日500円が支給される
受講手当は、公共職業訓練を受講した日に対して支給される手当です。金額は日額500円で、支給総額には上限(2万円、40日分)が設けられています。
受講手当は、基本手当の支給対象となる日に訓練を受講した場合に支給されます。欠席した日や、基本手当が支給されない日は対象外となる点に注意しましょう。
金額としては大きくありませんが、昼食代や文房具代などの足しになる手当です。
通所手当で交通費も支給される
通所手当は、自宅から訓練施設までの交通費を補助する手当です。電車やバスなどの公共交通機関を利用する場合の定期代相当額が、月額42,500円を上限に支給されます。
自宅から訓練施設までの距離が一定以上ある場合や、公共交通機関の利用が難しくマイカーで通う場合なども、条件を満たせば支給対象になります。
交通費を理由に自宅から離れたコースを諦める必要がないため、コース選びの幅が広がります。支給には申請が必要なので、受講開始時にハローワークで手続きを忘れないようにしましょう。
家族と別居する場合は寄宿手当も対象
寄宿手当は、訓練を受けるために家族(配偶者や扶養している親族など)と別居して寄宿する場合に支給される手当です。金額は月額10,700円です。
たとえば、希望する訓練コースが自宅から通えない地域にしかなく、訓練施設の寮などに入る場合が該当します。支給には、ハローワークが「受講のために家族と別居する必要がある」と認めることが必要です。
対象となるケースは限られますが、専門性の高い長期コースを受講したい方は覚えておきたい手当です。
失業保険×職業訓練を活用する4つのメリット
失業保険をもらいながら職業訓練を受けると、通常の受給では得られない優遇を受けられます。主なメリットは次の4つです。
- 訓練終了まで失業保険が延長される
- 自己都合退職でも給付制限が解除される
- 訓練の受講が求職活動実績になる
- 無料で再就職に役立つスキルが学べる
それぞれ詳しく解説します。
訓練終了まで失業保険が延長される
最大のメリットは、訓練が修了するまで失業保険の支給が延長されることです。この仕組みを「訓練延長給付」といいます。
通常、失業保険は所定給付日数を使い切った時点で支給が終わります。しかし、ハローワークの受講指示を受けて公共職業訓練を受講している場合は、所定給付日数が途中でなくなっても、訓練修了日まで基本手当が支給され続けます。
たとえば、所定給付日数が90日の方が、受給開始から1カ月後に3カ月間の訓練を始めたとしましょう。本来であれば訓練の途中で所定給付日数が尽きてしまいますが、訓練延長給付により、訓練の最終日まで基本手当を受け取れます。
所定給付日数が短い方ほど、この延長の恩恵は大きくなります。「失業保険が切れる前に就職を決めなければ」という焦りを減らし、学びに集中できる点は大きな安心材料です。
自己都合退職でも給付制限が解除される
転職などの自己都合で退職した場合、失業保険には「給付制限」がかかります。求職申込み後7日間の待期期間を経たうえで、原則1カ月は基本手当を受け取れません。
しかし、受講指示を受けて公共職業訓練を受講すると、訓練開始日の前日で給付制限が解除されます。つまり、訓練開始日以降は、給付制限期間中であっても基本手当が支給されるのです。
自己都合で退職した方にとって、無収入の期間を短くできるのは大きなメリットです。退職後すぐに訓練を始められるよう、在職中から興味のある分野やコースの募集時期を調べておくと、この制度をより有効に活用できます。
訓練の受講が求職活動実績になる
失業保険を受け取り続けるには、原則として失業認定日までの期間に一定回数以上の求職活動実績が必要です。求人への応募やセミナー参加など、実績づくりに負担を感じる方も少なくありません。
公共職業訓練を受講している期間は、訓練を受けること自体が求職活動とみなされます。そのため、別途求人に応募したり、セミナーに参加したりして実績を作る必要はありません。
失業認定の手続きも、訓練施設での出席状況をもとに行われるため、通常の受給者のように認定日ごとにハローワークへ出向く負担も軽くなります。実績づくりに時間を取られず、スキルの習得に集中できる環境が整っているといえます。
無料で再就職に役立つスキルが学べる
民間のスクールで同じ内容を学ぼうとすると、コースによっては数十万円の受講料がかかることもあります。職業訓練であれば、テキスト代などの実費を除いて無料で学べるため、費用面の負担を大きく抑えられます。
さらに、多くの訓練施設では、スキル習得だけでなく就職支援も受けられます。
- キャリアコンサルティングによる職業相談
- 応募書類の作成指導や面接練習
- 訓練施設に寄せられる求人の紹介
- 取得を目指せる資格試験の対策
失業保険をもらいながら職業訓練を受ける流れ
失業保険をもらいながら職業訓練を受けるまでには、いくつかの手続きが必要です。全体の流れは次のとおりです。
- ハローワークで求職申込みと受給手続き
- 職業相談で希望する訓練コースを決める
- 受講申込みをして選考試験を受ける
- 合格後に受講指示を受けて入校する
- 訓練中は受講証明書で失業認定を受ける
コースによっては申込みから開講まで1〜2カ月ほどかかるため、全体のスケジュールを把握したうえで早めに動き出しましょう。
ハローワークで求職申込みと受給手続き
退職後、会社から離職票が届いたら、住所地を管轄するハローワークで求職申込みと失業保険の受給手続きを行います。手続きの際には、主に次の書類が必要です。
- 離職票(1と2)
- マイナンバーカード(ない場合は通知カードと本人確認書類)
- 証明写真(マイナンバーカードを提示する場合は省略できることがあります)
- 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
受給手続きが完了すると、受給資格者として職業訓練の相談ができるようになります。訓練を希望していることは、この段階で窓口に伝えておくとスムーズです。
職業相談で希望する訓練コースを決める
次に、ハローワークで職業相談を受け、希望する職種と受講するコースを決めます。
コースは、ハローワークの窓口での案内のほか、施設内のパンフレットやハローワークインターネットサービスの訓練検索でも探せます。訓練施設によっては見学会や説明会を開いているので、気になるコースがあれば参加してみましょう。カリキュラムの内容や教室の雰囲気、修了生の就職先などを確認しておくと、入校後のミスマッチを防げます。
コースを選ぶ際は、次の点を確認しておくと安心です。
- 訓練内容が目指す職種に直結しているか
- 取得を目指せる資格は何か
- 訓練期間と開講日が支給残日数の条件を満たしているか
- 自宅から無理なく通える場所か
受講申込みをして選考試験を受ける
受講するコースが決まったら、募集期間内にハローワークで受講申込みを行います。申込みには、所定の入校願書などの書類が必要です。
職業訓練は、申し込めば誰でも受講できるわけではありません。多くのコースで選考試験が実施され、合格した方だけが受講できます。選考の内容は、主に次のとおりです。
- 筆記試験:国語や数学などの基礎学力を確認する問題
- 面接:受講の動機や就職への意欲、訓練を修了できるかを確認
面接では、「なぜこのコースを受講したいのか」「修了後にどのような仕事に就きたいのか」を具体的に伝えることが大切です。前職の経験と、訓練で身につけたいスキル、目指す職種の3つをつなげて説明できるように準備しておきましょう。
合格後に受講指示を受けて入校する
選考試験から数日から1週間程度で、合否の通知が届きます。合格した場合は、ハローワークで受講指示の手続きを行います。
この受講指示を受けることで、訓練延長給付や給付制限の解除といった優遇の対象になります。あわせて、通所手当や寄宿手当など、該当する手当の申請も済ませておきましょう。
手続きが完了したら、指定された開講日から訓練が始まります。
訓練中は受講証明書で失業認定を受ける
訓練期間中の失業認定は、「公共職業訓練等受講証明書」をもとに行われます。受講証明書には、訓練施設が出席状況などを記載し、受講者自身もアルバイトなどの就労状況を記入します。
通常の受給者のように、認定日ごとに求職活動の実績を報告する必要はありません。認定を受けた分の基本手当と各種手当は、おおむね4週間ごとに指定の口座へ振り込まれます。
提出方法や提出のタイミングは地域や訓練施設によって異なる場合があるため、入校時の案内をよく確認しておきましょう。
職業訓練を受ける前に知っておきたい注意点
職業訓練は、失業保険を受け取りながら学べる心強い制度ですが、あくまで再就職のための訓練です。受講前に次の注意点を理解しておきましょう。
選考試験に落ちる可能性がある
人気の高いコースは応募者が定員を上回ることが多く、選考試験で不合格になる可能性があります。特に、IT系やWebデザイン系、医療事務系などは倍率が高くなりやすい傾向です。
不合格になった場合、次の募集を待つ間にも失業保険の支給残日数は減っていきます。第1希望に落ちた場合の代わりとなるコースも事前に検討しておくと、残日数の条件を満たせなくなるリスクを減らせます。
開講時期を自由に選べない
職業訓練のコースは、開講日があらかじめ決まっています。自分の都合に合わせて好きなタイミングで受講を始めることはできません。
希望するコースの開講が数カ月先の場合、それまでの期間は通常の受給者として求職活動を続けることになります。また、開講を待っている間に支給残日数が足りなくなるケースもあるため、退職前からコースの開講スケジュールを調べておくことをおすすめします。
欠席や遅刻が多いと手当が減る
職業訓練は、仕事と同じように毎日決められた時間に通うことが前提です。欠席した日は、原則として受講手当が支給されず、基本手当についても支給の対象外となる場合があります。
また、多くの訓練施設では、修了の条件として訓練時間の8割以上の出席を求めています。出席率が基準を下回ると、退校処分になる可能性もあります。
病気や就職面接などやむを得ない理由で休む場合は、診断書や面接の証明書などの提出を求められることがあります。欠席する際は、必ず訓練施設に連絡して手続きを確認しましょう。
アルバイトは申告が必要で制限もある
訓練期間中のアルバイトは、一律に禁止されているわけではありません。ただし、働いた日や収入は受講証明書で必ず申告する必要があります。申告せずに基本手当を受け取ると不正受給とみなされ、支給額の返還に加えて、厳しいペナルティが科される場合があります。
さらに、週20時間以上働くなど雇用保険の加入条件を満たす働き方をすると、就職したとみなされて失業保険を受け取れなくなります。訓練の時間帯と重なる勤務もできません。
アルバイトをする場合は、始める前にハローワークと訓練施設に相談し、訓練と受給に影響が出ない範囲で行いましょう。
途中退校すると延長給付が止まる
訓練を途中でやめた場合、退校日の翌日以降は訓練延長給付が受けられなくなります。所定給付日数がすでに終わっている方は、その時点で失業保険の支給が止まってしまいます。
一方で、訓練期間中に就職が決まった場合は、就職を理由とした退校が認められています。内定が出たら、速やかにハローワークと訓練施設に報告し、退校日や入社日を相談しましょう。条件を満たせば、就職時に再就職手当を受け取れる場合もあります。
「思っていた内容と違った」という理由での途中退校を避けるためにも、入校前の見学や説明会でカリキュラムをしっかり確認しておくことが大切です。
採用責任者から見た職業訓練の評価
最後に、採用責任者としての経験から、職業訓練が転職活動でどう見られるかをお伝えします。
私の考えでは、職業訓練の受講歴そのものが、選考で大きく不利になることはありません。むしろ未経験の職種への応募では、「空白期間を学び直しに使った」という前向きな姿勢として受け取られることが多いと感じています。
一方で、採用する側が本当に知りたいのは「訓練で何ができるようになったか」です。履歴書に訓練校名とコース名を書くだけでは、ほかの受講生との差がつきません。評価につながりやすいのは、次のような伝え方です。
- 訓練で身につけたスキルを具体的に書く(使えるソフト、取得した資格など)
- 訓練中に作成した成果物を見せられるようにしておく
- 前職の経験と訓練で学んだ内容を組み合わせて、応募先で貢献できることを説明する
特にIT系やWeb系のコースでは、ポートフォリオの有無が選考結果を左右することも珍しくありません。訓練期間中から、転職活動で使える成果物を意識して取り組むと、修了後の就職活動を有利に進められます。
まとめ:失業保険と職業訓練を賢く使って再就職を目指そう
失業保険の受給資格がある方は、ハローワークの受講指示を受けることで、失業保険をもらいながら公共職業訓練を受講できます。最後に、この記事のポイントを振り返ります。
- 失業保険の受給者は公共職業訓練、受給できない方は求職者支援訓練が対象
- 失業保険と職業訓練受講給付金は併用できない
- 受講には求職申込み、受講指示、支給残日数、前回受講からの期間などの条件がある
- 訓練中は基本手当に加えて、受講手当や通所手当などを受け取れる
- 訓練延長給付や給付制限の解除により、収入の不安を抑えながら学べる
- 選考や開講時期、出席率、アルバイトの制限などの注意点を事前に確認しておく
職業訓練は、費用をかけずに新しいスキルを身につけ、キャリアの選択肢を広げられる制度です。ただし、支給残日数やコースの開講時期によっては希望どおりに受講できないこともあるため、退職後はできるだけ早くハローワークで相談することが成功への第一歩になります。
制度を正しく理解し、訓練で得たスキルを具体的な成果として伝えられるよう準備して、納得のいく再就職を実現してください。
