60歳定年退職の失業保険はいくら?待機期間・手続き・年金との関係を解説

60歳の定年退職が近づくと、「失業保険はもらえるのか」「いくら受け取れるのか」が気になるはずです。

結論から言うと、60歳の定年退職でも失業保険(雇用保険の基本手当)は受け取れます。しかも自己都合退職のような給付制限がなく、待期7日間が終われば支給対象になります。

私は株式会社イールドマーケティングの代表として、大手広告代理店・スタートアップ・フリーランス・経営者と働き方を一通り経験し、採用責任者として60代の方の面接も数多く担当してきました。その立場から、制度の説明だけでなく「定年後にどう動くのが得か」まで踏み込んで解説します。

この記事を読めば、自分がいくら・いつから・何日分もらえるのかがはっきりし、退職前にやるべきことが整理できます。

目次

60歳の定年退職でも失業保険はもらえる

まず前提として、定年退職は失業保険の対象です。「自分から辞めたのだから対象外では」と誤解している方が多いのですが、そのようなことはありません。

定年退職は給付制限なしで受給できる

失業保険には、自己都合で退職した人に対して一定期間支給を待たせる「給付制限」という仕組みがあります。

一方、就業規則で定められた定年を迎えて退職した場合、この給付制限は適用されません。定年退職は本人の意思で辞めたというより、あらかじめ決まっていた雇用契約の終了だからです。

つまり、ハローワークで求職の申し込みをした日から数えて7日間の待期期間さえ終われば、その翌日から支給対象の日がカウントされ始めます。

退職理由待期期間給付制限
定年退職7日間なし
会社都合(解雇・倒産など)7日間なし
自己都合退職7日間あり

待期期間と給付制限は別物です。ここを混同すると受給開始日の見込みがずれるので、定年退職は「7日待てばよい」と覚えておいてください。

失業保険を受け取るための受給条件

定年退職者が基本手当を受け取るには、次の条件を満たす必要があります。

離職前2年間に被保険者期間が12か月以上ある

定年退職は「一般の離職者」に分類されるため、原則として離職日以前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上必要です。定年まで勤め上げた方であれば、まず問題なくクリアできます。

働く意思と能力があり、求職活動をしている

失業保険は「失業中の生活を支える」制度ではなく、「再就職するまでの生活を支える」制度です。

そのため、退職後に働く予定がまったくない場合は受給できません。ハローワークで求職の申し込みを行い、認定期間ごとに求職活動実績を残していく必要があります。

すぐに就職できる状態である

病気やケガで働けない状態、家族の介護に専念する予定がある状態では、受給要件を満たしません。この場合は後述する受給期間の延長を検討することになります。

65歳以降の退職は別制度になる

同じ定年退職でも、退職時の年齢が65歳以上かどうかで受け取れる給付が変わります。60歳定年の方は基本手当、65歳を超えてから退職する方は高年齢求職者給付金です。

項目60歳以上65歳未満(基本手当)65歳以上(高年齢求職者給付金)
支給方法4週間ごとに分割支給一時金として一括支給
給付日数90日〜150日30日分または50日分
老齢厚生年金との関係併給調整あり併給できる

金額面だけを見れば、基本手当のほうが圧倒的に有利です。65歳の誕生日の直前に退職するか、65歳を超えてから退職するかで受給額が大きく変わるため、再雇用で65歳近くまで働く予定の方は退職日の設定に注意してください。

再雇用の満了や継続雇用の終了も同じ扱いになる

60歳でいったん定年を迎え、再雇用制度で65歳まで働いたあとに契約が満了して退職するケースも、基本的には給付制限のない離職として扱われます。

また、会社が継続雇用を用意しなかった、あるいは提示された条件が著しく低く継続を断らざるを得なかったといった事情がある場合、離職理由の判断が変わることもあります。離職票に記載された離職理由に納得できないときは、ハローワークの窓口で異議を申し立てられる点を覚えておいてください。

60歳定年退職の失業保険はいくらもらえる?

受給総額は「基本手当日額 × 所定給付日数」で決まります。それぞれの決まり方を順番に見ていきます。

基本手当日額の計算方法と上限額

基本手当日額は、次の2ステップで計算します。

ステップ1:賃金日額を出す

退職前6か月間に支払われた賃金の総額を180で割った金額が賃金日額です。賞与は含めず、通勤手当や残業代などの各種手当は含めて計算します。

賃金日額 = 退職前6か月の賃金総額 ÷ 180

ステップ2:給付率を掛ける

賃金日額に給付率を掛けたものが基本手当日額です。60歳以上65歳未満の給付率は45〜80%で、退職前の賃金が高い人ほど率が低くなる仕組みになっています。

基本手当日額 = 賃金日額 × 給付率(45〜80%)

なお60歳以上65歳未満の基本手当日額には上限と下限があり、上限は7,830円、下限は2,562円です。この金額は毎年8月に改定されるため、正確な数字はハローワークで確認してください。

ここで押さえておきたいのは、給与が高かった人ほど「所得の置き換え率」は低くなるという点です。現役時代に月50万円だった方でも、日額の上限に張り付いてしまうため、月額換算では20万円台前半にとどまります。

加入期間で決まる所定給付日数は90〜150日

定年退職は一般の離職者に分類されるため、所定給付日数は雇用保険の加入期間だけで決まります。年齢による上乗せはありません。

雇用保険の加入期間所定給付日数
10年未満90日
10年以上20年未満120日
20年以上150日

同じ会社に20年以上勤めて定年を迎えた方であれば、150日分が受け取れます。

注意したいのは、一部の解説記事で「60歳以上は240日」「最大330日」といった日数が紹介されているケースがある点です。これは解雇や倒産で離職した特定受給資格者の日数であり、通常の定年退職には当てはまりません。

受給総額のシミュレーション

実際にどのくらいの金額になるのか、2つのケースで計算してみます。いずれも概算のため、実際の金額はハローワークの試算で確認してください。

月収30万円・勤続20年以上のケース

賃金日額は「30万円 × 6か月 ÷ 180日」で1万円です。この賃金水準だと給付率はおよそ55%前後となり、基本手当日額は約5,400円になります。

勤続20年以上なので所定給付日数は150日です。

5,400円 × 150日 = 約81万円

4週間ごとの支給額は、5,400円 × 28日でおよそ15万円です。

月収50万円・勤続20年以上のケース

賃金日額は約16,600円です。この水準になると給付率は下限の45%が適用され、基本手当日額は約7,500円になります。

7,500円 × 150日 = 約112万円

上限額の7,830円に近い水準ですが、これ以上は増えません。月収が60万円でも80万円でも受給額は頭打ちになるため、現役時代の収入が高かった方ほど「思ったより少ない」と感じやすいのが実態です。

会社都合扱いになれば給付日数は増える

定年退職はあくまで一般の離職者ですが、次のようなケースでは特定受給資格者や特定理由離職者に該当し、給付日数が増える可能性があります。

  • 会社が継続雇用制度を用意しておらず、定年で雇用が終了した
  • 提示された再雇用の労働条件が、通常考えられる水準を著しく下回っていた
  • 定年前に事業所の廃止や大量離職があった

該当すれば、加入期間によっては最大240日まで日数が伸びます。差額は数十万円規模になるため、心当たりがある方は離職票の離職理由コードを必ず確認してください。

2/3(H2③・H2④)を最初から出力します。

60歳定年退職後に失業保険をもらう手続きの流れ

定年退職の場合、手続きの進め方そのものは通常の退職と変わりません。ただし退職日があらかじめ決まっているぶん在職中に準備できることが多く、動き出しが早いほど初回の振込も早まります。

退職前に会社へ確認しておく書類

失業保険の手続きで最も時間がかかるのが、離職票の受け取りです。会社がハローワークに手続きをしてから発行されるため、退職日から手元に届くまで10日から2週間ほどかかります。

在職中に、次の書類について発行時期と受け取り方法を確認しておいてください。

雇用保険被保険者離職票(1と2)

失業保険の申請に必須の書類です。定年退職の場合、離職票2の離職理由欄が「定年による離職」になっているかを必ず確認します。ここが通常の自己都合として記載されていると給付制限がかかってしまうため、誤りがあればすぐに会社かハローワークに連絡してください。

雇用保険被保険者証

会社が保管しているケースが多い書類です。退職時に返却されるので、紛失しないよう保管しておきます。

退職証明書と源泉徴収票

失業保険そのものには使いませんが、国民健康保険への切り替えや確定申告で必要になります。あわせて依頼しておくと二度手間を防げます。

離職票が届かないまま2週間以上が過ぎる場合は、ハローワークに相談すれば会社への催促や仮手続きの案内を受けられます。総務担当者に「いつ発行されるか」を退職前に聞いておくのが確実です。

ハローワークで求職の申し込みをする

離職票が届いたら、住所地を管轄するハローワークへ行き、求職の申し込みと受給資格の決定手続きを行います。この日が「受給資格決定日」となり、すべての起点になります。

持ち物は次のとおりです。

必要なもの補足
雇用保険被保険者離職票(1・2)会社から受け取った原本
マイナンバー確認書類マイナンバーカード、通知カードなど
身元確認書類運転免許証、マイナンバーカードなど
証明写真縦3.0cm×横2.4cm、2枚程度
本人名義の預金通帳またはキャッシュカード振込先の指定に使用

窓口では求職申込書を提出し、希望する仕事内容や勤務条件を登録します。ここで働く意思を示すことが受給の前提になるため、現実的な希望条件を書いておくことが大切です。

採用側の経験から言うと、60代の求職登録では希望条件を絞りすぎると紹介そのものが来なくなります。職種を1つに限定せず、これまでの経験が活かせる周辺職種まで広げて登録しておくほうが、結果的に選択肢は増えます。

雇用保険説明会に参加する

受給資格が決定すると、後日開催される雇用保険説明会の日時を指定されます。ここで受給の仕組みや失業認定の受け方について説明を受け、失業認定申告書と雇用保険受給資格者証を受け取ります。

この説明会への参加も求職活動実績として扱われるのが一般的です。指定された日に参加できない場合は、必ず事前にハローワークへ連絡してください。無断で欠席すると手続きが進まず、初回の振込が遅れます。

待期7日間の満了後に初回認定日を迎える

受給資格決定日から7日間が待期期間です。定年退職はこの7日間だけで、追加の給付制限はありません。

待期が明けた翌日から失業状態の日がカウントされ、その分が最初の認定対象になります。初回認定日は、受給資格決定日からおおむね3週間から4週間後に指定されます。

認定日にはハローワークへ行き、失業認定申告書に求職活動の状況を記入して提出します。この認定を受けて初めて、対象期間分の基本手当が確定します。

認定日は原則として変更できない

指定された認定日に行かないと、その回の分は支給されません。就職面接や病気など正当な理由がある場合は事前申請で変更できますが、旅行や私的な用事は認められないと考えておいてください。

初回振込までにかかる期間の目安

初回の振込は、初回認定日からおよそ5営業日前後で指定口座に入金されます。離職票の受け取りから逆算すると、退職日から初回振込までは1か月半から2か月ほどかかるのが一般的です。

段階退職日からの目安
離職票の受け取り10日から2週間
ハローワークで手続き2週間から3週間
雇用保険説明会3週間から4週間
初回認定日1か月半前後
初回振込1か月半から2か月

初回は待期7日間が差し引かれるため、支給される日数が少なくなります。金額が想定より少ないと感じるのは初回だけで、2回目以降は28日分がまとまって振り込まれます。

退職後の生活費は、この2か月の空白を見込んで準備しておくと安心です。

60歳定年退職者だけが使える受給期間の延長制度

ここからが、60歳定年退職ならではの重要なポイントです。定年退職者には、他の離職者にはない受給期間の延長制度が用意されています。

受給期間を最長2年まで延ばせる

失業保険には「受給期間」という期限があり、原則として離職日の翌日から1年以内に受給を終える必要があります。この1年を過ぎると、所定給付日数が残っていても打ち切りです。

一方、60歳以上の定年退職者や、定年後の再雇用期間が満了して離職した方については、退職後しばらく休養したいという理由で求職の申し込みをしない期間を、最大1年間まで受給期間に上乗せできます。

項目内容
対象者60歳以上の定年退職者、継続雇用期間が満了して離職した方
延長できる期間最大1年間
延長後の受給期間最長2年間

つまり、退職後1年間はゆっくり休み、その後にハローワークで手続きを始めて残りの1年で受給する、という選択が可能になります。

長年勤め上げた後に、少し休んでから次を考えたいという方は少なくありません。この制度は、そうした人が受給権を失わないために設けられたものです。

申請期限は退職日の翌日から2か月以内

延長制度で最も注意すべきなのが、申請期限です。

受給期間の延長を希望する場合、退職日の翌日から2か月以内に、住所地を管轄するハローワークへ受給期間延長申請書を提出する必要があります。

期限を過ぎると延長できない

この2か月という期限は厳格で、過ぎてしまうと延長は認められません。休養してから求職活動をするつもりで放置した結果、受給期間が1年のままとなり、実質的に受給できる日数が減ってしまうケースがあります。

退職後は健康保険の切り替えや年金の手続きが重なって慌ただしくなりますが、延長を考えているなら真っ先に着手してください。

申請は本人以外でも可能

申請書の提出は、郵送や代理人による手続きも認められています。体調面や遠方であることを理由に窓口へ行けない場合は、事前にハローワークへ相談すれば対応方法を案内してもらえます。

延長を使うべき人と使わない方がいい人

延長制度は便利ですが、誰にでも得というわけではありません。

延長を検討したほうがいい人

  • 退職後にまとまった休養や旅行の予定がある
  • 親の介護や家族の事情で、すぐには働けない
  • 資格取得や学び直しに数か月を充てたい
  • 体調を整えてから再就職活動を始めたい

こうした方は、無理に受給を始めて求職活動実績を積むより、いったん延長して万全の状態で臨むほうが現実的です。

延長しない方がいい人

  • 退職後すぐに再就職したい
  • 生活費として基本手当を早く受け取りたい
  • 再就職手当を狙っている

すぐ働く意思があるなら、延長せずに手続きを進めたほうが早く給付を受けられます。また、早期に再就職すれば再就職手当の対象にもなるため、トータルの受取額で有利になることもあります。

延長中は基本手当を受け取れない点に注意

延長期間中は、あくまで「受給の権利を保留している」状態です。手当そのものは支給されないため、その間の生活費は自分で確保しておく必要があります。

退職金や貯蓄で数か月から1年をまかなえるかどうかが、延長を選ぶかどうかの実質的な判断基準になります。

残り1/3(H2⑤・H2⑥・まとめ)です。

失業保険と年金・再雇用はどちらが得か

60歳の定年退職では、失業保険をもらうか、再雇用で働き続けるかという選択が発生します。ここは受け取れる総額が大きく変わる分岐点です。

特別支給の老齢厚生年金は同時に受け取れない

60歳台前半に受け取れる「特別支給の老齢厚生年金」と失業保険の基本手当は、同時に受給できません。ハローワークで求職の申し込みをした月の翌月から、基本手当の受給が終わる月まで、年金の支給が停止されます。

ただし、この論点に該当する人は年々減っています。特別支給の老齢厚生年金は支給開始年齢が段階的に引き上げられ、生年月日によっては対象外となるためです。

状況併給調整の影響
特別支給の老齢厚生年金を受給できる世代基本手当を受けると年金が停止される
支給開始年齢の引き上げで対象外の世代併給調整は関係ない

自分が対象かどうかは、日本年金機構から届く年金に関する通知や、ねんきんネットで確認できます。対象外であれば、年金との調整を気にせず失業保険を受け取って問題ありません。

対象世代なら受給開始のタイミングを比較する

特別支給の老齢厚生年金を受け取れる世代の場合、年金額と基本手当日額を比べて、どちらが多いかで判断します。一般的には基本手当のほうが日額換算で高くなるケースが多いものの、勤続年数や賃金水準によって逆転することもあります。

年金事務所とハローワークの双方で試算してもらい、金額を並べて比較するのが確実です。

再雇用で働くなら高年齢雇用継続給付が対象

定年後に再雇用制度を使って働き続ける場合、賃金が下がることが一般的です。この賃金低下を補うのが高年齢雇用継続基本給付金です。

支給の要件は次のとおりです。

  • 60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者であること
  • 雇用保険の被保険者であった期間が5年以上あること
  • 60歳以降の賃金が、60歳時点の賃金の75%未満に低下していること

支給額は、賃金の低下率に応じて各月の賃金の最大10%です。65歳に達する月まで受け取れます。

支給額のイメージ

60歳時点の賃金が月40万円、再雇用後の賃金が月24万円(60%に低下)の場合、支給率は上限の10%が適用され、月24,000円が支給されます。これを5年間受け取れば、総額は140万円を超える計算です。

項目金額
60歳時点の賃金40万円
再雇用後の賃金24万円
高年齢雇用継続給付月24,000円
65歳までの累計約144万円

なお支給には限度額があり、賃金と給付の合計が一定額を超える場合は減額されます。

失業保険と高年齢雇用継続給付は併給できない

ここが最大のポイントです。高年齢雇用継続基本給付金は「基本手当を受給していない人」が対象のため、失業保険をもらいながら受け取ることはできません。

つまり、定年後の選択肢は実質的に次の2つになります。

選択肢受け取れる給付
退職して求職活動する失業保険(90日〜150日分)
再雇用で働き続ける給与+高年齢雇用継続給付(最長65歳まで)

金額だけを単純比較すると、再雇用で5年間働き続けるほうが給与と給付金の合計で圧倒的に上回ります。失業保険は最大でも150日分であるのに対し、再雇用は毎月の給与が入り続けるためです。

一度基本手当を受けてから再就職する道もある

基本手当を受給したあとに再就職し、賃金が下がった場合には「高年齢再就職給付金」の対象になる可能性があります。ただし、再就職日の前日時点で基本手当の支給残日数が100日以上あることなどの要件があり、再就職手当とは併給できません。

このケースは判断が複雑になるため、再就職の内定が出た段階でハローワークに相談し、どちらが有利か試算してもらうことをおすすめします。

ケース別に見る有利な選び方

これまでの内容を、状況別に整理します。

65歳まで働き続けたい人

再雇用を選び、高年齢雇用継続給付を受けるのが合理的です。給与収入が継続するうえ、厚生年金の加入期間も伸びるため、将来の年金額にも反映されます。

環境を変えて別の仕事に就きたい人

いったん退職して失業保険を受給しながら求職活動を進める形になります。この場合、早めに再就職が決まれば再就職手当の対象にもなります。

しばらく休んでから考えたい人

受給期間の延長を申請したうえで、休養後に求職活動を始める形が適しています。ただし延長中は無収入になるため、生活費の確保が前提です。

採用の現場を見てきた立場から補足すると、60代の再就職はブランクが長いほど難しくなるのが実情です。休養を挟むにしても、半年程度を目安に区切りをつけ、その間に希望条件の整理や職務経歴の棚卸しを進めておくと再開後の動きがスムーズになります。

60歳定年退職の失業保険で損しないための注意点

最後に、受給の場面でつまずきやすいポイントを整理します。

求職活動実績が不足すると支給されない

失業認定を受けるには、認定対象期間中に原則2回以上の求職活動実績が必要です。実績が足りないと、その回の基本手当は支給されません。

求職活動実績として認められる主な行動は次のとおりです。

  • ハローワークでの職業相談
  • ハローワークや民間の職業紹介事業者による職業紹介
  • 求人への応募
  • ハローワークが実施するセミナーや講習への参加
  • 再就職に役立つ国家資格などの受験

単に求人情報をインターネットで閲覧しただけでは実績になりません。求人サイトへの登録も、それだけでは実績として扱われない場合が多いため注意してください。

応募が最も確実な実績になる

窓口での職業相談も実績になりますが、認定日ごとに毎回ハローワークへ足を運ぶのは負担です。転職サイトから求人に応募すれば1件で1回分の実績になるため、自宅で完結させたい方には現実的な方法です。

働く意思がなければ受給対象外になる

失業保険は再就職を前提とした制度です。認定申告書で「就職する意思がない」と受け取られる回答をすると、支給が止まる可能性があります。

年金だけで生活する予定の方、家業の手伝いに専念する方などは、そもそも受給要件を満たしません。この点を誤解したまま申請すると、後から不正受給を問われるおそれもあります。

早期に再就職すれば再就職手当がもらえる

所定給付日数を3分の1以上残して安定した職業に就いた場合、再就職手当の対象になります。支給率は残日数に応じて60%または70%です。

支給残日数支給率
所定給付日数の3分の2以上70%
所定給付日数の3分の1以上60%

所定給付日数150日の方が残り100日で再就職した場合、基本手当日額の70%×100日が一時金として支給されます。基本手当日額が5,400円なら約37万円です。

早く決まるほど得になる設計のため、給付日数を使い切ることを目的にせず、良い求人があれば早めに動くほうが結果的に有利になります。

健康保険と年金の切り替えを忘れない

退職後は、健康保険と国民年金の手続きが必要です。失業保険とは別の話ですが、放置すると医療費が全額自己負担になるため、退職後14日以内を目安に進めてください。

健康保険は3つの選択肢がある

  • 国民健康保険に加入する
  • 前職の健康保険を任意継続する(最長2年)
  • 家族の被扶養者になる

任意継続は保険料が全額自己負担になりますが、扶養家族が多い方は国民健康保険より安くなることがあります。市区町村の窓口で国民健康保険料を試算してもらい、比較したうえで決めるのが確実です。

60歳以降の国民年金

60歳になれば国民年金の加入義務は終わるため、退職後に国民年金へ切り替える手続きは原則不要です。ただし、保険料の納付済期間が足りない場合は任意加入で年金額を増やせます。年金事務所で納付記録を確認しておくとよいでしょう。

まとめ:60歳定年退職の失業保険は手続きの順番で受給額が変わる

60歳の定年退職では、失業保険は給付制限なしで受け取れます。要点を整理します。

  • 定年退職は給付制限がなく、待期7日間の満了後から支給対象になる
  • 所定給付日数は加入期間に応じて90日から150日
  • 基本手当日額は賃金日額×給付率(45〜80%)で、60歳以上65歳未満の上限は7,830円
  • 退職日から初回振込までは1か月半から2か月が目安
  • 60歳以上の定年退職者は受給期間を最長2年まで延長できる(申請期限は退職日の翌日から2か月以内)
  • 失業保険と高年齢雇用継続給付は併給できないため、退職か再雇用かの選択になる

判断を分けるのは「65歳まで働き続けたいかどうか」です。働き続けたいなら再雇用と高年齢雇用継続給付、環境を変えたいなら失業保険を受けながらの求職活動、休養を挟みたいなら受給期間の延長という整理になります。

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この記事を書いた人

木本旭洋のアバター 木本旭洋 株式会社イールドマーケティング代表取締役

株式会社イールドマーケティング代表。大手広告代理店でアカウントプランナー、スタートアップで広告部門のマネージャーを経験後、2022年に当社を創業。AI/Webマーケティング支援を得意としている。会社員(大手とスタートアップ)/フリーランス/経営者/採用責任者すべて経験しておりキャリア情報も発信。

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