休職から退職する流れ。伝え方・タイミングともらえるお金を解説

「体調が戻らないまま休職期間が終わりそう」「このまま復職せずに退職したいけれど、どう伝えればいいのかわからない」

休職から退職へ進むとき、多くの方がこうした不安を抱えます。しかも厄介なのは、退職日を決めてしまった後では取り返しがつかない論点がいくつも存在することです。

私はこれまで大手広告代理店とスタートアップで会社員を経験し、現在は経営者として採用責任者も務めています。労務側の立場で休職者対応に関わった経験からお伝えすると、手続きは「知っている人が得をする」構造になっているのが実情です。

この記事では、休職から退職する際の伝え方や手続きの流れに加え、受け取れるお金と退職日の決め方まで整理して解説します。読み終える頃には、何をどの順番で進めればよいかが明確になっているはずです。

目次

休職から退職はできる?知っておきたい3つの前提

まず結論からお伝えすると、休職したまま退職することに法律上の問題はありません。ただし、進め方を誤ると退職理由や退職日で不利になるため、前提となるルールを押さえておきましょう。

休職中でも退職は法律上問題なくできる

休職は「労働義務を一時的に免除されている状態」であり、雇用契約そのものは継続しています。そのため、在職中の社員と同じように退職の意思表示が可能です。

「復職してから辞めるのが筋ではないか」と考える方は少なくありませんが、そのために無理な復職をして体調を崩し、結果的にさらに長引くケースを何度も見てきました。復職を経ずに退職することは、制度上まったく問題のない選択肢です。

会社側にも、休職中を理由に退職を拒否する権限はありません。退職の自由は労働者に認められた権利であり、引き止めに応じる義務もない点は覚えておいてください。

申し出から2週間で雇用契約は終了する

期間の定めのない雇用契約の場合、民法第627条により、退職を申し出た日から2週間が経過すれば雇用契約は終了します。

これは休職中であっても同じです。仮に会社が「引き継ぎが終わるまで辞めさせない」と主張しても、2週間の経過をもって契約は終了します。強い引き止めに遭ったときの最終的な拠り所として、知っておくと精神的に楽になるはずです。

ただし、実務上は次に説明する就業規則の期限に沿って進めるほうが、後の手続きがスムーズです。

就業規則の退職申出期限を先に確認する

多くの会社では、就業規則で「退職希望日の30日前までに申し出ること」といった期限を定めています。

法的には2週間で退職できますが、就業規則を無視して進めると離職票や源泉徴収票の発行が遅れるといった実害が出ることがあります。経営側の視点でお話しすると、社会保険の資格喪失手続きは退職日を起点に動くため、期限を守って申し出てもらえるほうが処理が早く終わるのは事実です。

休職中に就業規則を確認するのは負担が大きいと感じるかもしれませんが、次の項目だけは目を通しておきましょう。

就業規則で確認すべき4項目

確認項目見るべきポイント
退職の申出期限何日前までに申し出る必要があるか
休職期間の上限勤続年数ごとに何ヶ月まで認められるか
休職期間満了時の扱い自然退職か解雇か
退職金の支給条件休職期間が勤続年数に算入されるか

とくに最後の退職金の条件は見落としがちです。会社によっては休職期間を勤続年数に含めない規定があり、想定より支給額が下がることがあります。

休職期間の満了で自然退職になるケースもある

就業規則で定められた休職期間が満了しても復職できない場合、**自動的に雇用契約が終了する「自然退職」**として扱われる会社が多くあります。

自然退職は解雇とは異なり、会社からの一方的な意思表示ではなく、就業規則にあらかじめ定められたルールに基づく契約終了です。そのため解雇予告手当の対象にもなりません。

問題は、自然退職を待つと退職日が就業規則によって決まってしまう点です。後述する傷病手当金の受給条件や有給休暇の消化を考えると、自分でタイミングを選べないことがデメリットになる場合があります。

自然退職と自己都合退職の扱いの違い

項目自然退職自分から退職届を出す場合
退職日休職期間の満了日で固定自分で選べる
離職理由会社の記載による原則は自己都合
有給消化消化しにくい交渉の余地がある
傷病手当金の調整満了日に合わせるしかない条件を満たす日を選べる

どちらが有利かは状況によって変わります。判断基準は次の章で詳しく解説します。

休職から退職するベストなタイミングの決め方

休職からの退職で最も差がつくのが、退職日の決め方です。ここを誤ると、受け取れるはずのお金が数十万円単位で減ることもあります。

退職日に出勤すると傷病手当金が受け取れなくなる

これが最重要ポイントです。傷病手当金を退職後も継続して受け取るには、退職日に労務に服していないことが条件になります。

「最後の日くらいは挨拶に行こう」「私物を取りに行くついでに少し手伝おう」という善意の行動が、継続受給の権利を失わせてしまうのです。全国健康保険協会も、退職日に労務に服した場合は資格喪失後の傷病手当金を受けられないと明記しています。

挨拶や私物の引き取りをどうしても行いたい場合は、退職日ではない日に設定するか、郵送でのやり取りに切り替えてください。

健康保険の加入期間が1年以上あるかを確認する

傷病手当金の継続受給には、もう一つ条件があります。退職日までに、健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あることです。

ここでいう1年は「今の会社での勤続1年」ではありません。転職していても、健康保険の加入に空白期間がなければ通算できます。一方で、転職の合間に国民健康保険へ切り替えた期間があると、そこで継続性が途切れる点には注意が必要です。

もし加入期間が1年に少し足りない場合、退職日を後ろにずらすだけで条件を満たせることがあります。1日の差で受給できる総額が大きく変わるため、加入期間は必ず事前に確認しておきましょう。

傷病手当金を退職後も受け取るための条件

条件内容
加入期間退職日までに継続して1年以上の被保険者期間がある
退職時の状態傷病手当金を受けている、または受けられる状態にある
退職日の勤務退職日に出勤していない
受給できる期間支給開始日から通算1年6ヶ月まで

なお、任意継続被保険者だった期間は、この1年の計算には含まれません。

残っている有給休暇の残日数を確認する

休職中でも、有給休暇が残っていれば取得できる可能性があります。会社が認めれば、休職期間の一部を有給に振り替える運用も可能です。

有給を消化して給与が支払われた日は、傷病手当金は支給されません。ただし傷病手当金は給与の約3分の2の水準であるため、金額面だけを見れば有給のほうが手取りは多くなります。

一方で、有給を先に使い切ると、その分だけ傷病手当金の支給期間が後ろにずれる形になります。どちらを優先するかは、療養の見通しと家計の状況次第です。判断に迷う場合は、加入している健康保険組合に問い合わせるのが確実です。

自然退職を待つか自分で退職届を出すかの判断基準

休職期間の満了が近い方は、自然退職を待つか、自分から退職届を出すかで迷うはずです。判断の軸は次の3つです。

自分から退職届を出したほうがよいケース

  • 傷病手当金の継続受給条件を満たす退職日を選びたい
  • 有給休暇を消化してから退職したい
  • 転職活動の開始時期を自分でコントロールしたい

自然退職を待ったほうがよいケース

  • 会社に連絡を取ること自体が体調に大きな負担になる
  • 休職期間の満了日と、条件を満たす退職日が一致している
  • 離職理由の記載について会社と認識が揃っている

どちらを選ぶにせよ、離職票に記載される退職理由は必ず確認してください。体調不良による退職は「特定理由離職者」に該当する可能性があり、失業保険の条件が大きく変わります。この点は後の章で詳しく解説します。

第2/3(H2③〜H2④)をお出しします。


休職から退職を伝える方法と例文

退職の意思をどう伝えるかは、休職中の方にとって最も心理的な負担が大きいパートです。ただ、伝え方には定石があります。無理に対面へこだわる必要はありません。

伝える相手は直属の上司が原則

退職の申し出は、直属の上司に伝えるのが基本です。会社の指揮命令系統に沿った形になるため、その後の手続きが最もスムーズに進みます。

ただし、上司との関係悪化が休職の原因になっている場合は、人事部へ直接連絡して構いません。採用と労務の責任者を務めている立場からお伝えすると、人事部は休職者からの直接連絡を想定して動いています。「順番を飛ばした」と咎められることはまずありません。

産業医や保健師とやり取りしている場合は、その方に相談したうえで連絡先を確認するのも有効な進め方です。

電話・メール・郵送の三段構えで進める

体調を踏まえた現実的な進め方は、電話で一報を入れ、メールで内容を記録に残し、最後に退職届を郵送する流れです。

電話は最初のひと言だけで十分です。詳細を口頭で詰める必要はなく、「あらためてメールでご連絡します」と伝えて切り上げて問題ありません。メールで文面を残しておくと、退職日や引き継ぎの認識違いを防げます

電話をかけること自体が負担であれば、メールと郵送の二段構えでも成立します。退職の意思表示は口頭でも書面でも法的な効力に差はないためです。

伝える手段の使い分け

手段向いているケース注意点
電話会話に支障がない状態詳細は詰めず短時間で終える
メール記録を残したい、電話が難しい送信後に到達確認を取る
郵送連絡自体が困難特定記録郵便など記録が残る方法で

電話で伝えるときの例文

会話の流れは、切り出し、理由、締めの3段階で組み立てます。長く話す必要はありません。

「お世話になっております。休職中の〇〇です。ご相談したいことがあり、今お時間よろしいでしょうか。 療養を続けてまいりましたが、体調の回復が思わしくなく、復職が難しいと判断いたしました。つきましては、退職させていただきたくご連絡いたしました。 長らくご配慮いただき、ありがとうございました。退職日や必要な手続きについて、あらためてメールでご連絡いたします。」

理由を細かく説明する義務はありません。「体調の回復が思わしくない」という表現で十分に伝わります。

メールで伝えるときの例文

件名は用件が一目でわかる形にします。本文は感謝、経緯、依頼事項の順に構成しましょう。

件名:退職のご相談(〇〇部 氏名)

〇〇部長

お世話になっております。休職中の〇〇です。

長期にわたり休職のご配慮をいただき、深く感謝申し上げます。療養に専念してまいりましたが、体調の回復が十分でなく、復職が困難であると判断いたしました。

つきましては、誠に勝手ながら〇月〇日をもちまして退職させていただきたく存じます。

退職届の提出方法、貸与物の返却、必要書類の受け取りにつきまして、ご指示をいただけますと幸いです。体調の都合により出社が難しいため、郵送での対応をお願いできればと考えております。

ご迷惑をおかけし申し訳ございませんが、何卒よろしくお願い申し上げます。

退職希望日を明記しておくと、その後のやり取りが一往復で済みます。傷病手当金の条件を踏まえた日付を、あらかじめ決めたうえで送りましょう。

退職届は「一身上の都合」で問題ない

退職届の文面は、通常の退職と同じで構いません。理由は「一身上の都合により」と記載すれば足り、傷病名を書く必要はありません

心身の不調による退職であっても、退職届に病名を残すことにメリットはほとんどありません。書式に迷った場合は、会社所定のフォーマットがあるかを人事に確認するのが確実です。

郵送する際は、送付状を添えて特定記録郵便など記録が残る方法を使ってください。到着の有無で揉めるリスクを避けられます。

診断書の添付は基本的に不要

退職届に診断書を添える必要は、原則としてありません。退職は労働者の一方的な意思表示で成立するため、理由を証明する義務はないからです。

ただし、離職票に「体調不良による退職」と記載してもらいたい場合は、診断書が判断材料になることがあります。特定理由離職者の認定を受けたい方は、主治医に相談して診断書を用意しておくと後の手続きが有利に進みます。

なお、ハローワークでの認定にあたって求められる書類は状況によって異なります。事前に管轄のハローワークへ確認しておくと確実です。

連絡が難しい場合は退職代行という選択肢もある

上司や人事へ連絡すること自体が難しい状態であれば、退職代行の利用も現実的な選択肢です。本人に代わって退職の意思を伝え、貸与物の返却や書類のやり取りを仲介してくれます。

料金は数万円が相場で、決して安くはありません。それでも、連絡のストレスで療養が長引くことを考えれば、費用対効果が見合う場面はあります

有給消化や未払い賃金の交渉まで依頼したい場合は、労働組合や弁護士が運営するサービスを選ぶ必要があります。民間企業が運営するサービスは、法律上、交渉行為ができないためです。

休職から退職後にもらえるお金3つ

休職から退職する際に受け取れる可能性があるのは、傷病手当金、失業保険、退職金の3つです。それぞれ制度が異なり、申請先も別々なので順に整理します。

傷病手当金は退職後も最長1年6ヶ月受け取れる

傷病手当金は、業務外の病気やケガで働けず、給与が支払われない場合に健康保険から支給される制度です。支給額は、支給開始日以前12ヶ月の標準報酬月額を平均した額を30で割り、その3分の2に相当する額が1日あたりの金額になります。

支給期間は、支給開始日から通算して1年6ヶ月です。以前は暦の上での1年6ヶ月でしたが、現在は実際に支給された日数を通算して数えるため、途中で就労した期間があっても損をしにくい仕組みになっています。

在職中から受給していた方は、条件を満たせば退職後も継続して受け取れます。前章で触れたとおり、鍵になるのは加入期間と退職日の勤務です。

退職後の申請先と手続きの流れ

項目内容
申請先退職前に加入していた健康保険(協会けんぽ・健保組合)
必要書類傷病手当金支給申請書、医師の意見欄の記入
事業主の証明退職後の期間分は原則不要
申請の頻度1ヶ月ごとにまとめて申請するのが一般的

退職後は事業主証明が不要になるため、会社とやり取りせずに申請を続けられます。この点を知らずに「会社に頼めないから諦めた」という方が意外に多いので、覚えておいてください。

なお、傷病手当金の請求権には時効があります。労務不能であった日ごとに、その翌日から2年で消滅するため、申請の先延ばしは避けましょう。

失業保険は特定理由離職者に該当する可能性がある

失業保険(雇用保険の基本手当)は、働く意思と能力があるのに就職できない状態の方へ支給されます。

体調不良による退職の場合、「特定理由離職者」に該当すれば給付面で優遇されるのが大きなポイントです。自己都合退職として処理されると給付制限が発生しますが、特定理由離職者に認定されれば給付制限なしで受給を開始できます。

必要な被保険者期間も変わります。一般の自己都合退職は離職前2年間に12ヶ月以上が必要ですが、特定理由離職者は離職前1年間に6ヶ月以上で条件を満たします。

一般の離職者と特定理由離職者の違い

項目一般の離職者特定理由離職者
必要な被保険者期間離職前2年間に12ヶ月以上離職前1年間に6ヶ月以上
給付制限ありなし
所定給付日数年齢・加入期間による条件により優遇される場合がある

認定は最終的にハローワークが判断します。離職票に記載された退職理由と、診断書などの資料をもとに決まるため、離職票が届いたら記載内容を必ず確認してください

退職金は就業規則の支給条件を確認する

退職金は法律上の義務ではなく、会社の就業規則や退職金規程に基づいて支給されます。制度自体がない会社も珍しくありません。

確認すべきなのは、休職期間が勤続年数に算入されるかどうかです。多くの会社では休職期間を勤続年数から除外する規定を設けているため、想定していた金額を下回ることがあります。

支給時期は退職から1ヶ月から6ヶ月後が一般的です。生活費の見通しを立てる際は、すぐには入金されない前提で計算しておきましょう。

傷病手当金と失業保険は同時に受け取れない

ここは誤解が非常に多いポイントです。傷病手当金と失業保険は、同時に受給できません

理由は制度の前提が正反対だからです。傷病手当金は「働けない状態」であることが条件で、失業保険は「働ける状態」であることが条件になります。両方を同時に満たすことは論理的に不可能なのです。

そのため、療養中は傷病手当金、回復後は失業保険という順番で使い分けるのが基本になります。

傷病手当金から失業保険へ切り替える順番

  1. 退職後も傷病手当金を継続して受給する
  2. 退職後すぐにハローワークで受給期間延長を申請する
  3. 体調が回復し、就労可能になった時点で延長を解除する
  4. 求職の申し込みを行い、失業保険の受給を開始する

失業保険の受給期間は原則として離職日の翌日から1年間ですが、病気やケガで引き続き30日以上働けない場合は延長申請ができます。延長できる期間は最大3年で、本来の1年と合わせて最長4年まで受給期間を延ばせる仕組みです。

この延長申請を忘れると、療養中に受給期間が過ぎてしまい、回復後に失業保険を受け取れなくなります。傷病手当金の申請と並行して、必ず手続きしておいてください。

なお、傷病手当金の受給や退職後の給付金の手続きに不安がある場合は、社会保険給付金の受給サポートを提供している専門サービスに相談する方法もあります。

第3/3(H2⑤〜まとめ)をお出しします。


休職から退職した後に必要な手続き

退職後は、これまで会社が代行していた社会保険の手続きを自分で行う必要があります。期限が短いものが多いため、優先順位をつけて進めましょう。

健康保険は任意継続・国民健康保険・扶養から選ぶ

退職すると在職中の健康保険の資格は退職日で失われます。空白期間をつくらないよう、次の3つから選んで加入手続きを行ってください。

退職後の健康保険3つの選択肢

加入先主な条件手続き先
任意継続退職日までに継続2ヶ月以上の被保険者期間がある協会けんぽ支部または健保組合
国民健康保険条件なし市区町村の窓口
家族の被扶養者収入等の要件を満たす家族の勤務先

任意継続の申請期限は、退職日の翌日から20日以内と非常に短く設定されています。この期限を過ぎると原則として加入できないため、退職日が決まった時点で候補から外すかどうかを判断しておきましょう。

保険料は、任意継続では会社負担分がなくなるため在職中のおよそ2倍になります。一方、国民健康保険は前年の所得をもとに算定されるため、休職で収入が下がっていた方は国保のほうが安くなるケースもあります。市区町村の窓口で試算してもらったうえで比較するのが確実です。

なお、傷病手当金の継続受給は、どの健康保険に加入するかとは無関係です。退職前の健康保険から支給される仕組みなので、任意継続を選ばなくても受給は続けられます。ここを誤解して不要な保険料を払ってしまう方がいるので注意してください。

国民年金への切り替えと免除申請を行う

厚生年金の資格も退職日で失われます。次の就職先が決まっていない場合は、退職日の翌日から14日以内に市区町村の窓口で国民年金への切り替えを行ってください。

このとき合わせて確認したいのが、保険料の免除・納付猶予制度です。退職を理由とする場合は「失業による特例免除」が用意されており、前年所得ではなく退職の事実をもとに審査されます。療養中で収入が途絶えている方は、対象になる可能性が高い制度です。

未納のまま放置すると将来の年金額が減るだけでなく、障害年金を受け取れなくなるリスクもあります。払えない場合は必ず免除申請を出しておきましょう。手続きには離職票または雇用保険受給資格者証の写しが必要です。

失業保険の受給期間延長を申請しておく

前章でも触れましたが、重要なので手続きとして再度整理します。

病気やケガで引き続き30日以上働けない状態が続く場合、ハローワークに申請することで受給期間を延長できます。延長できる期間は最大3年で、本来の受給期間1年と合わせて最長4年まで基本手当を受けられる期間が延びます。

申請は、30日以上働けなくなった日の翌日以降にできるだけ早く行うのが原則です。延長後の受給期間の最終日までは申請可能ですが、遅れると所定給付日数を使い切れない可能性があります。

受給期間延長の手続き概要

項目内容
申請先住所地を管轄するハローワーク
主な必要書類離職票、受給期間延長申請書、延長理由を証明する書類
申請のタイミング30日以上働けなくなった日の翌日以降、できるだけ早く
延長できる期間最大3年(本来の1年と合わせて最長4年)

「すぐに働けないから離職票は不要」と考えて受け取らない方がいますが、これは大きな損失につながります。延長申請には離職票が必要なので、会社に必ず発行を依頼してください。

住民税の支払い方法と確定申告を確認する

住民税は前年の所得に対して課税されるため、退職後に収入がなくても支払い義務が生じます。在職中は給与から天引きされていた分が、退職後は自分で納付する形に切り替わります。

退職のタイミングによって扱いが変わる点に注意してください。1月から5月に退職する場合は残額が最後の給与から一括徴収され、6月から12月に退職する場合は普通徴収に切り替わって納付書が届くのが一般的です。

また、年の途中で退職して再就職していない場合は、年末調整が行われません。自分で確定申告をすれば、納めすぎた所得税が還付される可能性があります。傷病手当金や失業保険は非課税所得なので、申告の対象にはなりません。

医療費が高額になった方は、医療費控除の対象になるかも確認しておきましょう。

休職から退職するときの注意点と転職への影響

退職後のキャリアについて不安を感じる方は多いはずです。採用側の視点も交えて、実態をお伝えします。

休職歴が転職先に伝わることは基本的にない

結論から言えば、休職の事実が転職先に自動的に伝わる仕組みは存在しません

離職票や雇用保険被保険者証には休職期間の記載はなく、源泉徴収票にも休職の有無は表れません。年金記録にも「休職」という項目はないため、書類から把握されることはないと考えて問題ありません。

前職への在籍確認が行われる場合もありますが、企業が回答するのは在籍期間や役職までが一般的です。健康情報は要配慮個人情報にあたるため、本人の同意なく開示することは適切ではありません。

ただし、休職期間中に賞与や給与が支払われていなければ、源泉徴収票の支払金額が例年より低くなります。ここから推測される可能性はゼロではありません。

離職票の退職理由は必ず確認する

離職票が届いたら、記載されている離職理由を必ず確認してください。体調不良による退職が単なる「自己都合」として処理されているケースが実際にあります。

自己都合として扱われると、給付制限が発生し、必要な被保険者期間の条件も厳しくなります。記載内容に納得できない場合は、ハローワークで異議を申し立てることが可能です。

その際、診断書や休職を証明する書類が判断材料になります。会社と争う必要はなく、あくまでハローワークが事実に基づいて判断する仕組みです。

面接で休職について聞かれたときの伝え方

採用責任者として面接する立場からお伝えすると、休職歴そのものを理由に見送ることはほとんどありません。企業が知りたいのは、現在の体調と、再発を防ぐために何をしているかの2点です。

避けたいのは、前職の批判で終わってしまう説明です。「上司が理不尽だった」「会社の体制に問題があった」という話だけでは、環境が変われば同じことが起きるのではないかという懸念が残ります。

有効なのは、事実を簡潔に伝えたうえで、現状と対策をセットで示す構成です。

面接で伝える3つの要素

  • 休職に至った経緯を事実ベースで簡潔に説明する
  • 現在は回復しており、就業に支障がないと明確に伝える
  • 再発防止のために取り組んでいることを具体的に示す

たとえば「業務量の集中が続いた時期に体調を崩し、療養しておりました。現在は主治医からも就業可能との判断をいただいております。負荷の兆候を早めに共有する習慣をつけており、同じ状況を繰り返さないよう意識しています」といった伝え方であれば、懸念は解消されやすくなります。

法律上、健康状態の申告義務はありません。ただし業務遂行に直接影響する事情がある場合は、入社後のミスマッチを防ぐためにも共有しておくほうが結果的に働きやすくなります。

体調が回復してから転職活動を始める

焦って転職活動を始めると、再発のリスクが高まります。療養中は失業保険の受給期間延長で時間を確保し、回復してから本格的に動き出すのが結果的に近道です。

とはいえ、体調が戻ってきた段階で情報収集だけ始めておくのは有効です。求人を眺めることで、自分がどういう働き方を望んでいるかが整理されていきます。

その際に意識したいのが、企業側からのアプローチを受けられる状態をつくっておくことです。転職サイトに登録してレジュメを整えておけば、自分から応募し続けなくてもオファーが届きます。体調に波がある時期は、この受け身の導線があるだけで負担が大きく変わります。

まとめ:休職から退職する流れを押さえて損なく次のステップへ

休職から退職する際に押さえるべきポイントを整理します。

  • 休職中でも退職は法律上可能で、申し出から2週間で雇用契約は終了する
  • 退職日に出勤すると傷病手当金の継続受給ができなくなる
  • 健康保険の加入期間が継続1年以上あれば、退職後も通算1年6ヶ月まで受給できる
  • 伝え方は電話・メール・郵送の三段構えで進め、退職届は「一身上の都合」で問題ない
  • 体調不良による退職は特定理由離職者に該当し、給付面で優遇される可能性がある
  • 傷病手当金と失業保険は同時に受給できず、受給期間延長の申請が必須になる
  • 健康保険の切り替えは退職日の翌日から20日以内、国民年金は14日以内が期限

休職からの退職で最も重要なのは、退職日を決める前に条件を確認することです。傷病手当金の継続受給条件や有給の扱いは、一度退職日が確定してしまうと後から変更できません。

一方で、休職歴がキャリアの致命傷になることはありません。採用の現場を見てきた立場から言えば、企業が見ているのは過去の休職ではなく、現在の状態とこれからの働き方です。

まずは制度を使って生活の土台を確保し、体調が戻ってから次の一歩を踏み出してください。焦らずに順番を守ることが、結果的に最短ルートになります。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

木本旭洋のアバター 木本旭洋 株式会社イールドマーケティング代表取締役

株式会社イールドマーケティング代表。大手広告代理店でアカウントプランナー、スタートアップで広告部門のマネージャーを経験後、2022年に当社を創業。AI/Webマーケティング支援を得意としている。会社員(大手とスタートアップ)/フリーランス/経営者/採用責任者すべて経験しておりキャリア情報も発信。

目次