バーチャルオフィスは、これらの手間やコストを抑えながら、法人登記や郵便物の受け取り、電話の転送などの機能を利用できるサービスです。そのため、起業時のオフィスの選択肢として、バーチャルオフィスを検討する経営者が増えています。
そこで本記事では、起業時にバーチャルオフィスを使うメリットとデメリットについて、詳しく解説します。起業時にオフィスの選択を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
バーチャルオフィスとは?
バーチャルオフィスとは、物理的なオフィスを構えることなく、事業用の住所や電話番号、郵便物の受け取り・転送などの機能を利用できるサービスです。
バーチャルオフィスの基本的なサービス内容は、次のとおりです。
- 住所利用:法人登記や名刺、会社案内、ホームページへの使用など
- 郵便物保管・転送:郵便物や宅配便の受け取り・転送
- 電話転送サービス:電話番号の取得・利用と、電話の転送
起業時にバーチャルオフィスを使うメリット
初期費用を抑えられる
オフィスを構えると、家賃や礼金、敷金などの初期費用が大きくかかります。また、オフィスの装飾や設備の準備、レイアウトの設計など、さまざまな手間もかかります。
一方、バーチャルオフィスを利用すれば、これらの初期費用と手間を抑えることができます。
バーチャルオフィスの初期費用は、プランやサービス内容によって異なりますが、一般的にオフィスを構えるよりも安価です。たとえば、住所利用のみのプランであれば、月1.000円程度から利用できます。
住所取得までのスピードが速い
バーチャルオフィスを利用すれば、最短即日で住所を取得できます。これは、バーチャルオフィスでは、物件を探したり、契約を結んだり、内装工事をしたりする必要がないためです。
起業時に迅速に事業を開始したい場合、バーチャルオフィスは検討する価値のあるサービスです。
以下に、バーチャルオフィスを利用することによって住所取得までのスピードが速くなる具体的な例を挙げます。
- オフィスを構える場合、物件探しからオフィスの開設まで、一般的に2〜3か月程度かかります。
- バーチャルオフィスを利用すれば、最短即日で住所を取得できるプランもあり、オフィスを構える場合のように、住所取得に数週間から数か月かかることはありません。
プライバシーを守れる
起業家やフリーランサーなど、ビジネスを行う者の多くは、自宅をオフィスとして使用することがありますが、この場合、ビジネス関連の通信の際に自宅の住所や電話番号を公開することが避けられません。これはプライバシーのリスクとなる場合が多いです。
バーチャルオフィスを利用すると、事業の公式な住所や電話番号として都心の住所や専用の電話番号を取得できます。これにより、自宅の住所や個人の電話番号を公にすることなく、ビジネス活動を行うことができます。この利点は、ビジネスの信頼性を高める効果もあります。
また、クライアントや取引先からの電話や郵送物は、バーチャルオフィスが提供するアドレスや電話番号に届けられます。これにより、不必要な訪問や連絡を避けることができ、より集中して仕事に取り組むことができます。
さらに、自宅の住所や電話番号をビジネス用に使用することは、プライバシーの侵害や不必要なトラブルの原因となることがあるため、これを避ける手段としてバーチャルオフィスの利用は非常に価値があると言えます。例えば、不要な営業電話や迷惑な訪問、または個人的な情報が公になるリスクを軽減することができます。
一等地の住所などを借りればブランディングも可能
一等地の住所は通常、高い家賃や運営コストがかかるため、多くのスタートアップ企業やフリーランスには手が届きにくいものです。しかし、バーチャルオフィスを利用することで、これらの高価なコストを大きく削減しながら、都心の一等地の住所を持つことができます。
ブランディングの観点から考えると、企業の住所が一等地であることは、ビジネスの評価やイメージ向上に寄与します。特に、クライアントや顧客がその企業の住所を知っている場合や、ビジネスカードやウェブサイトに表示されている場合、信頼性や業界での地位を高める手助けとなります。
さらに、一等地の住所を使用することで、企業の実際の規模や業績とは無関係に、大手企業や成功している企業と同じフィールドで競争することができるという印象を与えることができます。これにより、スタートアップや小さなビジネスでも、大手企業と同等のビジネスチャンスを得ることが期待できます。
起業時にバーチャルオフィスを使うデメリット
許認可が下りない職種がある
一部の職種では、バーチャルオフィスの住所を登記先として使用できない可能性があります。これは、許認可を取得するために、実在のオフィススペースを必要とする職種があるためです。
たとえば、以下の職種は、バーチャルオフィスの住所を登記先として使用できない可能性があります。
- 建築士事務所
- 人材紹介業
- 宅地建物取引業者
- 警備業
- 産業廃棄物処理業
- 金融関係業
- 医療関係業
これらの職種は、許認可を取得するために、実在のオフィススペースを必要とする基準が定められています。そのため、バーチャルオフィスの住所を登記先として使用すると、許認可が下りない可能性があります。
起業時にバーチャルオフィスを利用する場合は、許認可が必要な職種かどうかを事前に確認しておくことが重要です。
来訪者と打ち合わせできない
バーチャルオフィスは、郵便物の受け取り・転送や電話の転送などの機能にのみ利用できるサービスです。そのため、来訪者との打ち合わせや来客対応はできません。
起業時に来訪者との打ち合わせや来客対応が必要になる場合、バーチャルオフィスは不向きです。
予期せずクライアントや取引先がビジネスアドレスを訪れた場合、物理的なオフィスが存在しないため、彼らを適切に対応することができません。信頼性を損なう可能性があります。
訪者との打ち合わせや来客対応ができないことで、事業の成長や拡大に大きな影響を与える可能性があります。
バーチャルオフィスによっては、オプションで会議室やラウンジなどのスペースを有料で提供する場合があります。これらのスペースを利用することで、来訪者との打ち合わせや来客対応を行うことは可能です。
法人銀行口座が作れない可能性がある
バーチャルオフィスの住所を登記先として使用すると、法人銀行口座が作れない可能性があるというデメリットがあります。これは、銀行が法人の信用度を評価する際に、登記先の住所を重要視する傾向があるためです。
たとえば、以下の銀行は、バーチャルオフィスの住所を登記先として使用した場合、法人銀行口座の開設を断る可能性があります。
- メガバンク
- 地方銀行
- 信用金庫
バーチャルオフィスによって、法人銀行口座の開設をサポートするサービスを提供している場合があります。これらのサービスを利用することで、法人銀行口座の開設をスムーズに行うことができます。
起業時にバーチャルオフィスを利用する場合は、法人銀行口座の開設のサポートがあるかどうかを事前に確認しておくことが重要です。
起業時にバーチャルオフィスを選ぶときのポイント
オプションサービス
バーチャルオフィスを選択するときの重要な要素として、オプションサービスが挙げられます。このオプションサービスには、多くのメリットがある一方で、考慮すべきポイントも存在します。
- バーチャルオフィスのオプションサービスには、通常、
- 郵便物の転送や受取
- 専用の電話番号の提供
- 会議室の利用
- 秘書サービス
などが含まれます。これらのサービスを利用することで、起業家やビジネスオーナーは、都心の一等地の住所や専用の電話番号を持つことができ、ビジネスの信頼性を高めることが可能となります。
また、会議室を利用することで、クライアントや取引先とのミーティングをオフィスと同等の環境で行うことができます。これにより、自宅やカフェなどの非フォーマルな場所でのミーティングのリスクや制約を避けることができます。
起業支援がある
起業支援があるかどうかも確認しておくことが大切です。起業支援には、以下のようなものがあります。
- 地方自治体の起業支援事業との連携
- 起業相談のサポート
- 起業家向けネットワークの提供
これらの起業支援を利用することで、起業に関する知識やノウハウを身につけることができます。また、他の起業家と交流することで、情報交換や人脈づくりを行うことも可能です。
住所の立地
起業時にバーチャルオフィスを選ぶ際には、住所の立地も重要なポイントです。住所の立地は、顧客や取引先への印象や、事業のブランディングに影響を与える可能性があります。
住所の立地によって期待できるメリットを以下に挙げます。
- 顧客や取引先への信頼感や安心感の向上
- 事業のブランディング効果の向上
- 採用活動の効率化
例えば、都心のビジネス街や知名度の高いエリアに住所を構えることで、顧客や取引先からの信頼感や安心感を向上させることができます。また、事業のブランディング効果を高め、採用活動の効率化にもつながります。
起業時にバーチャルオフィスを使う際の注意点
希望する融資制度が利用できるか
融資制度によっては、バーチャルオフィスの住所を登記先として使用すると、融資が受けられない場合があります。そのため、起業前に、希望する融資制度の条件をよく確認しておきましょう。
具体的には、以下の融資制度がバーチャルオフィスの住所を登記先として使用できない可能性があります。
- 銀行融資
- 国や地方自治体による融資
- 民間金融機関の融資
銀行融資では、一般的に、バーチャルオフィスの住所を登記先として使用すると、融資が受けられないとされています。これは、銀行が法人の信用度を評価する際に、登記先の住所を重要視する傾向があるためです。
国や地方自治体による融資では、制度によって、バーチャルオフィスの住所を登記先として使用できるかどうかが異なります。一部の制度では、バーチャルオフィスの住所を登記先として使用できない場合があります。
民間金融機関の融資では、制度によって、バーチャルオフィスの住所を登記先として使用できるかどうかが異なります。一部の金融機関では、バーチャルオフィスの住所を登記先として使用できない場合があります。
起業時にバーチャルオフィスを利用する場合、希望する融資制度の条件をよく確認し、バーチャルオフィスの住所を登記先として使用できるかどうかを確認しておきましょう。
以下に、融資制度が受けられない場合の対策を具体的に挙げます。
- 自宅をオフィスとして利用し、自宅の住所を登記先として使用する。
- バーチャルオフィスの住所を登記先として使用できる融資制度を利用する。
- バーチャルオフィスの住所を登記先として使用できる融資制度を提供する金融機関を探す。
起業時にバーチャルオフィスを利用する場合、融資制度が受けられない場合の対策についても検討しておきましょう。
契約を考えている住所に犯罪歴がないか確認
バーチャルオフィスの住所に犯罪歴がないか確認することは、起業時にバーチャルオフィスを利用する場合の重要な注意点です。
バーチャルオフィスの住所は、法人登記や銀行口座開設など、さまざまなビジネスシーンで使用されます。そのため、犯罪歴のある住所を登記先や口座開設先として使用すると、不利益を被る可能性が高くなります。
起業時にバーチャルオフィスを利用する場合、契約を考えている住所に犯罪歴がないかを確認しておきましょう。
犯罪歴の確認方法としては、以下の方法が考えられます。
- インターネットで住所検索をする
- バーチャルオフィスの運営会社に確認する
インターネットで住所検索をすれば、過去に犯罪歴があったかどうかを簡単に調べることができます。バーチャルオフィスの運営会社に確認すれば、運営会社が把握している情報に基づいた回答を得ることができます。
起業時にバーチャルオフィスを利用する場合、犯罪歴の確認を怠らず、自社の事業に悪影響を及ぼさないように注意しましょう。
オフィス外観の確認
起業時にバーチャルオフィスを使う際は、オフィス外観の確認も重要です。オフィス外観は、顧客や取引先の印象に大きく影響するため、契約前に必ず確認しておきましょう。
オフィス外観の確認で注意すべき点は、以下のとおりです。
- ビルの外観
- エントランス
- フロア
- オフィスの扉
ビルの外観は、事業の信頼感やステータスを示す重要な要素です。エントランスは、来訪者を迎える第一印象を左右する場所です。フロアは、清潔感や整頓されているかどうかを確認しましょう。オフィスの扉は、セキュリティやセキュリティ対策の有無を確認しましょう。
以下に、オフィス外観の確認で注意すべきポイントを具体的に挙げます。
- ビルの外観は、新しくきれいに整えられているか
- エントランスは、明るく開放的であるか
- フロアは、清潔感があり整頓されているか
- オフィスの扉は、セキュリティ対策が施されているか
起業時にバーチャルオフィスを使う際は、オフィス外観の確認を怠らず、自社の事業に悪影響を及ぼさないように注意しましょう。
また、バーチャルオフィスの運営会社によっては、オフィス外観の写真をホームページやパンフレットに掲載している場合があります。契約前に、これらの写真を必ず確認しておきましょう。
まとめ
バーチャルオフィスは、初期費用やランニングコストを抑えながら、法人登記や郵便物の受け取り、電話の転送などの機能を利用できるサービスです。そのため、起業初期のコスト削減や、プライバシー保護に効果的です。
しかし、バーチャルオフィスには、許認可が下りない職種や、融資制度が利用できない場合があるなどのデメリットもあります。また、オフィス外観が顧客や取引先の印象に影響する可能性があるため、契約前に必ず確認しておきましょう。
起業時にバーチャルオフィスを利用する場合、自社の事業内容や予算、顧客や取引先のニーズなどを考慮して、メリットとデメリットを比較検討することが大切です。